「望んでいなかった勝利」という共通点
親トランプ派のなかには、今回の全米テニス協会の反応を、トランプ氏が2016年の大統領選で勝利した時のリベラル寄りのマスコミに例える人もいる。
一連の騒動で私が何より驚いたのが、表彰式で同協会の会長がショックを隠せない様子で、ウィリアムズ選手や観客らに気を使うように、こう発言したことだ。
「私たちが求めていた結果ではなかったかもしれません......でも、セリーナ、あなたは王者の中の王者です」。しかも、そのあとに続く大坂選手への祝辞はあっさりしたものだった。
2016年の大統領選でリベラル寄りのマスコミは、クリントン氏の勝利を望み、信じ切っていた。今回の全米オープンでアメリカ人のほとんどがウィリアムズ選手の勝利を望み、信じ切っていたように。
クリントン氏に対しては、祝福の言葉が用意されていても、望んでいなかった思いもかけない勝利を収めたトランプ氏には、言葉もなかったマスコミ。
大坂選手自身をトランプ氏に例えているわけではないが、大坂選手に対する今回の同協会の姿勢が、勝利を得たトランプ氏に対する当時のリベラル寄りのマスコミに酷似すると感じた親トランプ派は少なくないようだ。(随時掲載)
(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。