電源の「大規模集中」と「分散型」
大手電力会社はこれまで100万キロワット級以上の原発や火力発電所といった大規模集中電源を建設し、効率的な発電を進めてきた。しかし、大地震が起きた場合、これらの大規模発電所が緊急停止し、一部地域が停電となるケースは、東日本大震災はじめ、これまでも全国であった。
エネルギー政策に詳しい都留文科大学の高橋洋教授は「このようなことが起こりうることは、残念ながら以前から想像できた。その本質的な原因は集中型電力システムの脆弱性にある」と語る。「北海道全域の停電は集中型電源の集中立地による電源脱落リスクの高さが招いた事故であり、これを補うべき(本州との)広域運用の不備が拍車をかけた」という。
要するに、大手電力会社が原発や火力発電所など大規模な電源に依存する限り、今回のような大規模停電のリスクを抱え込むことになる。
では、大規模停電を避けるには、どうしたらよいのだろうか。高橋教授は「分散型電源を分散立地させることだ。小規模発電所が各地に散らばっていれば、災害などでいくつかが停止しても、全体への影響は軽微になる」と説く。分散型電源とは風力や太陽光など再生可能エネルギーはもちろん、発電と給湯などを同時に行なうコージェネレーション(熱電併給)の小型火力発電所などだ。
消費地から遠い原発や火力発電所などで大規模に発電しても、長い送電線を伝わるうちに電力をロスするし、原発は需給に応じた出力を調整できない。それよりも消費地に近い場所で、必要に応じた電力を小規模に発電した方が効率的だという分散型電源の考え方は以前からある。しかし、日本では遅々として普及が進まない。
高橋教授は「2011年の震災から学んで対策をすべきだった。少しでも分散型電源を増やすとか、連系線を積極的に使える状態を作るとか、そういう努力が十分だったのか」と指摘。「今回はやむを得なかったとしても、次こそ同じことが起こらないよう、前向きな対応をすべきだ」と主張している。