写真週刊誌「フライデー」の公式サイトが2018年9月14日朝、吉澤ひとみ容疑者(33)のひき逃げの瞬間の動画を公開した。吉澤容疑者が運転する車が横断歩道上の自転車をはね、そのまま走り去る様子が収められている。
ネット上では吉澤容疑者に対する怒り声が殺到。しかし、その一方で動画には、事故現場周辺に居合わせた複数の歩行者が事故を目の当たりにしているにもかかわらず、被害者を助けに行かずにその場を立ち去っていく様子も収められている。このため、「なぜ助けに行かなかったのか」との声も多い。
「自分には救助できない」というバイアス
公開された動画をみると、事故にあった自転車の女性と男性のほかに、女子高生とみられる学生など、数人が歩道を歩いていたり、横断歩道を渡ろうとしていた。
いずれも事故が起きた直後、被害者2人の様子を見ていたが、2人が相次いで立ちあがったのを見届けるかのように、そのまま横断歩道を渡ったり、通り過ぎる姿が映っている。 ネットでは、2人を救助しないことに批判の声も出ているが、事故を目の当たりにしているにもかかわらず立ち去ってしまった歩行者たちについて、心理学博士の鈴木丈織氏は以下のように指摘する。
「まず、『周りにいる誰かが助けるはずだ』という「責任の分散」(傍観者効果)が働くため、目の前の事態を認識しても駆け寄ったりなどの行動をしない人が多いです。それから、救助といった普段は行わない行動については、『自分にはできないに決まっている』というバイアスが働くため、やはり救助に向かわない人が多いです。ほかの人から見ると無責任な行動に見えますが、人間の心理からすると自然な行動です」
また、ほかに考えられることとして、
「事故という衝撃的な光景を目の当たりにしたため、倒れている負傷者を見て『自分も動けない』との錯覚に陥り、助けに行けなくなった可能性もあります。また、事故という極限状態から『自分だけで良いから助かりたい』との思いで現場から離れてしまったり、『自分が関与したことで状況が悪化してしまうのではないか?』との思いで助けに行けなくなる人もいます」
「今回の事故では、はねられた2人が比較的すぐに起き上がっていることから、『軽傷に違いない』というバイアスもかかっていると思います。事態を良い方向に考えるバイアスもまた、助けに行けなくなる理由の1つです。これらのさまざまなバイアスがかかってしまうため、日ごろの訓練がないと救助というものはなかなかできないものなのです」
とも説明する。
心理学的な観点からすると、救助せずに立ち去ってしまった歩行者たちの行動は、意外なまでに人間の心理に従った行動だったようだ。
(J-CASTニュース編集部 坂下朋永)