甲子園に愛されたレジェンド
この日、松坂は試合後、報道陣に「投げづらかった。20年前の投げやすさはなかった(日刊スポーツ)」と語っている。決して得意ではない甲子園のマウンドで、38歳の松坂が勝てる理由はどこにあるのか。
松坂と同じ1980年生まれの野球選手は「松坂世代」と呼ばれる。ここ最近、横浜高でともに甲子園で活躍した後藤武敏(DeNA)をはじめとし、村田修一(元巨人)、杉内俊哉(巨人)と、今季3人の「松坂世代」が相次いでグローブを置いた。現在、現役でプレーしているのはわずか7人。この日のマウンドにかけた思いを松坂は「もう少し頑張るよという決意表明のような日」と表現した。
ファンもまた高校野球のレジェンドを後押しした。この日の2回、バッターボックスに入った松坂に対して、中日の応援団は「ハッピーバースデー」の演奏で祝福。阪神ファンで埋まるライトスタンドからも大きな拍手が起こった。「力を与えてくれる場所」。甲子園を語る時に松坂が常に口にする言葉だ。甲子園には魔物が棲むといわれるが、松坂の強いモチベーションがこの魔物さえも味方につけたのだろう。