野田聖子総務大臣は、寄付金に対する自治体の返礼費用の割合が3割を超えたり、返礼品が地場産でなかったりする自治体への寄付を、税優遇の対象から外す方針だ。会見(2018年9月11日)で、制度見直しの検討を表明した。この方針は適切だろうか。
ふるさと納税は、2007年、第1次安倍晋三政権の時に、菅義偉(すがよしひで)総務大臣の発案で創設され、自分で選んだ自治体に寄付すると、払った住民税の一定割合までを税額控除するというものだ。筆者も当時、官邸にいながら制度創設を手伝った。
「足による投票」を推進
この制度の画期的なことは、税額控除の仕組みと寄付金を合わせているので、事実上、税の使い方を国民が選ぶことができることだ。これは、政府(官僚)が税で徴収して政府(官僚)が配分するのが公正であるという官僚の考え方とはまったく反している。そのため、ふるさと納税の創設の時、官僚は猛反対だった。それを、当時の菅総務大臣が政治的な豪腕で押し通したものだ。
この制度で、都市部の税収が減っているというのは、当初の目論見どおりである。都市部で得た税収を地方に再分配するのは至難の業である。――政治家や官僚のエゴがぶつかり合って、議論は進まないだろう。しかし、住民が自ら寄付し、それに応じて税額控除を受けることができれば、再分配がうまく進むーーこれこそ、菅氏が意図した政府(官僚)が再配分する仕組みより、国民が再配分する仕組みとしてふるさと納税がうまく機能しているといえる。
政府(官僚)の配分より、ふるさと納税のような、国民による配分を導入した方が、うまく自治体運営できる可能性が広がる。
社会学ではチャールズ・チボーの「足による投票」という言葉がある。好ましい行政サービスを提供してくれる自治体に住民が移動して自治体の財政収入が上がって、そうした自治体のほうが生き残るという考え方である。ふるさと納税は、実際に住民が住所移転しなくても財政収入に影響を与えて、好ましい行政サービスを実施する自治体を応援するわけである。
「足による投票」は、住民に望ましい首長を選挙で選ぶ「手による投票」とともに、よりよい自治体運営を目指すためには不可欠な考え方である。ふるさと納税は、筆者としては「足による投票」を推進するものと考えている。