出光株の高値と「村上戦略」 経営陣から引き出した「条件」とは

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   出光興産の株式が、米制裁によるイラン産原油の供給不安などによる原油価格の上昇に伴って上昇を続けている。2018年8月30日に株式分割を調整した実質ベースでの上場来高値を更新した後も高値圏を維持。7月に決着した昭和シェル石油との経営統合への期待感も引き続き強く、当面は上値を追う展開になる可能性がある。

   出光株は長期トレンドでみると2016年10月から上昇局面にある。昭和シェルとの統合への期待感やじわじわ続く原油価格の上昇などから、17年10月に3000円ラインを超え、12月11日に4075円をつけ、上場来高値を更新した。その後も4000円ラインで堅調に推移した。

  • 昭和シェル石油との経営統合の期待感は強い
    昭和シェル石油との経営統合の期待感は強い
  • 昭和シェル石油との経営統合の期待感は強い

「昭和シェルとの統合」話が急展開

   そして、株価に弾みをつけたのが、出光にとって今年最大のビッグイベントといえる「昭和シェルと2019年4月に経営統合する」との発表(18年7月10日)だ。出光と昭和シェルは15年11月に経営統合で合意したものの、出光株の3分の1超を持つ出光創業家が16年6月の株主総会でこれに異を唱えて以降、両社の協議が暗礁に乗り上げてしまったことは記憶に新しい。そこへ17年のある時から、「日本版モノ言う株主」村上世彰氏が創業家の相談相手のような格好になった。村上氏は水面下の交渉で「経営統合後の新会社に創業家から取締役を2人出す」といった条件を出光経営陣側にのませて話をまとめた。

   何とも劇的な成り行きだったが、株式市場が成長を期待できるとして歓迎したのは当然だった。7月10日の午前11時という取引時間中に昭和シェルとの経営統合が発表された出光株は同日、一時、前日終値比17.8%(680円)高の4490円に急伸した。統合相手の昭和シェルはもちろん、価格競争が落ち着くとの思惑からJXTGやコスモHDも大幅高となった。

価格競争の鎮静化、原油価格の上昇圧力・・・

   その後も原油価格の上昇が続いて出光株も上昇を続けるわけだが、実は村上氏が出光経営陣との交渉で引き出した株主重視の条件が、株式市場に好感され続けているのだ。これも7月10日に発表されており、2020年3月期からの3年間に総還元性向50%超を目安にする、というもの。統合会社の3年間の合計純利益は5000億円以上を目指すとしている。「5年で500億円の統合効果」などを実現できれば、不可能な数字ではないだろう。還元する相手は当然ながら株主で、還元手段は配当と自社株買いということになる。50%ということは3年で5000億円の半分、2500億円もの金が株主に還元されるのだ。村上世彰氏恐るべしと言うべきだろう。自社株買いは既存株主の持ち株比率を高める効果がある、つまり株主の「分け前」が増えるのだ。大株主の創業家は3年間で百億円単位を手にする可能性があるとされるが、他の株主にとってもおいしい話に違いない。

   純利益を稼ぐには本業が順調でなければならない。もちろん長期的にはガソリン需要は右肩下がりとなろうが、短期的には業界再編によって勝者なき価格競争の沈静化が見込まれるうえ、足元の原油価格の上昇圧力も「稼ぎ」を支援するだろう。7月以降、国内系、外資系の証券各社が出光の目標株価を相次いで引き上げた。ガソリン価格高止まりの影響を受ける消費者には迷惑な話だが、出光株は高値圏で推移するとの見方が多い。

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