両親が起こした訴訟で4歳のときに原告にされた女性(18)に対し、仙台地裁は判決で、敗訴が確定したとして訴訟費用約90万円を支払うよう命じたと報じられた。
親が自己破産するなどしたことの結果だというが、ネット上では、判決への疑問も多く出て議論になっている。
「敗訴当事者の負担が原則で、未成年者も支払い義務」
この判決については、朝日新聞と河北新報がウェブ版記事でもそれぞれ報じた。
それらによると、女性は、仙台市内の分譲マンションに両親と入居後、2004~05年に両親とともにシックハウス症候群と診断された。
両親はその後、東京都内の大手不動産会社を相手取り、損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こした。父親が法定代理人となって、女性も原告になった。しかし、12年になって、最高裁で敗訴が確定したという。
訴訟費用約200万円は原告負担とされたが、母親は死亡し、父親は自己破産して負担を免れ、女性分の支払いも拒んだ。
これに対し、国は女性にその分の支払いを求め、仙台地裁は18年9月11日、女性に訴訟費用の支払いを命じる判決を下した。女性は裁判で、当時4歳で判断能力がなく、親に支払い義務があると主張したが、地裁は、「訴訟費用は敗訴の当事者の負担が原則で、未成年者が支払い義務を負わないということではない」などと退けた。
弁護士「良くも悪くも結果が帰属する」
判決内容が報じられると、ネット掲示板やニュースのコメント欄などでは、様々な意見が書き込まれ、当時4歳だった女性の費用負担を命じた判決はおかしいとする意見も相次いだ。
「何で4歳の時に勝手に使われた名前で責任が発生してるんだ?」「親の尻拭いを子供がしないといけないなんて」「これはちょっと可哀想」「訴訟費用を払う能力が無い人間が訴訟を起こせる制度なのがそもそも間違ってる気がする」といったものだ。
一方で、判決に理解を示す向きもあり、「これで逃げられるなら子供を原告にして裁判する奴だらけになる」「勝訴すれば4歳児分の慰謝料もとれるのに、敗訴では責任を負わないというのは無理では」「法の不備ではなく、親の道義的な問題だ」などの指摘があった。
ただ、訴訟負担を命じられた女性については、「何らかの救済措置が有っても良い」「この子が勝手に名前使われたと親を訴えればいいのかね?」との声も出ていた。
報道を受けてツイートした坂和宏展弁護士は9月12日、J-CASTニュースの取材に対し、判決についてこう分析した。
「勝訴すれば、4歳児であってもお金がもらえるわけで、良くも悪くも結果が帰属するということになります。小さい子が裁判できないと、もらえるものがもらえなくなりますので、制度の欠陥ではないと思います。子供が債務の当事者になっていれば、親を訴えることが成り立たない気もしますが、子供も自己破産してしまえば、支払わなくてよくなるかもしれませんね」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)