森保一監督率いるサッカー日本代表の初陣を飾った親善試合・コスタリカ戦(3-0)で、最も存在感を放ったのは背番号「10」、MF中島翔哉(24)と言って間違いなさそうだ。称賛の声が相次いでいる。
10番といえば、MF香川真司(29)が長年背負ってきた。まだ1試合戦ったに過ぎないが、中島がこのエースナンバーを奪取するのではないか、という声すら出始めている。
南野のゴールにつながるスルーパス
2人のポジションは異なる。中島が左サイドを主戦場とするのに対し、香川は中央が多いため、そうそう比較できるものではない。W杯メンバーでいえば、中島がポジション争いをするのはMF乾貴士(30)にあたる。
だが、2018年9月11日のコスタリカ戦後、ツイッターでは「10番は結局、香川と中島のどっちが着るのか楽しみ」「中島の技術はまぎれもなく香川から10番奪えるレベル」といった声がツイッターに続々と寄せられている。特別な背番号であるだけに、今後誰がつけるのかは大きな関心事となった。
それもそのはずで、中島は新生日本代表の攻撃の要として圧倒的な存在感を示した。特徴的だったのはゴールへの推進力。特にドリブル突破だ。左サイドでコンビを組むDF佐々木翔(28)、ボランチのMF遠藤航(25)らから積極的に縦パスを受け、果敢に仕掛けた。
前半だけでも、相手陣内でドリブルしたのは少なくとも7回あった。ハーフラインより後ろで受けた同38分も、猛スピードで縦にドリブル。2人をかわし、3人目がプレスをかけたところで、MF堂安律(20)にパスを送った。相手ペナルティエリア手前まで運び、複数の相手選手を引きつけてチャンスを演出した。
そして後半21分、遠藤から縦パスを受けた中島は、クロスの素振りを見せながらスルーパスを選択。再度走り込んだ遠藤に渡り、中央で待つFW南野拓実(23)のゴールが生まれた。
「10番はあのくらいボール運んでくれないと」
多少強引にでもゴールに向かって自ら仕掛けた10番・中島。ドリブルやシュートは「目立つ」プレーだった。あえて比較するなら、ロシアW杯の10番・香川は、トップ下として乾ら味方を生かす黒子のような役割を担った。前線のスペースを作り出すため、下がり目のポジションを取って「消える」こともあった。
ネット掲示板では「香川は突っつくだけだからなあ 10番はあのくらいボール運んでくれないと」「あれが10番のプレーですわ 周りが困ったら中島にボール渡して打開してくれって感じで あきらかにチームを引っ張ってた」と、「10番」として両選手のプレーを比べる向きもある。
ただコスタリカ戦の中島には、「ミスも少なくて良かったけどボックス(編注:ペナルティエリア)の中にゴリゴリ入っていくような怖さも出して欲しいわ」との声もある。数字だけで見れば、ゴールやアシストは記録していない。
コスタリカはFIFAランクで格上の32位(日本は55位)だが、1.5軍のメンバーだった。一方の森保監督も、ロシアW杯で主力だった香川ら海外組の招集を見送っており、両チームにとって「テスト」の位置づけだ。新生代表は1試合を終えたにすぎない段階。「中島、香川、堂安の二列目が共存して機能するなら日本代表は確実にレベルが上がる」と、今後の融合を期待する声は数多い。
第1期ドルトムント(ドイツ)時代の香川は、ゴールの近くで勝負し、得点をあげるタイプだった。その後12年にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)へ移籍すると、徐々にプレーの幅を広げている。当時23歳。今24歳の中島が、現在のポルティモネンセ(ポルトガル)から欧州4大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ)に移籍することがもしあれば、また変化していく可能性もある。