意図的な「スルー」だったのか、単なる「うっかり」なのか――。
安倍晋三首相が2018年9月11月午前、公式ツイッターを通じ、韓国・文在寅大統領への「感謝」のメッセージを発した。文氏が台風21号、北海道胆振東部地震(北海道地震)に対し、お見舞いツイートを書き込んだことへの返礼だ。
ところが文氏のツイートは、5日も前のものだった。ほぼ同時にエールをつぶやいた台湾や豪州の首脳に対しては、翌日にレスポンスを返したにも関わらず、文氏だけが「放置」された格好になっていたのである。
文氏「日本の底力が発揮されると信じる」
事の起こりは文氏が6日夜、ツイッターでこうつぶやいたことだ。
「台風や地震で犠牲になった、大阪と札幌の住民を哀悼いたします。(中略)災害が相次いで発生していますが(中略)日本の底力が発揮されるものと信じています」
4日に日本に上陸し、大阪などに被害をもたらした台風21号。6日に起こった北海道地震。日本を相次いで襲った自然災害に対し、犠牲者を悼むとともに、復興へのエールを送る内容だ。同じ6日夕方には、オーストラリアのスコット・モリソン首相から、同じ日の夜には台湾の蔡英文総統から、同様の「お見舞い」がツイッターを通じて寄せられている。
ところが明けて7日、安倍首相は、
「古くからの友人である台湾の皆さんからの心温まるお見舞いの言葉,ありがとうございます」
「モリソン首相,あなたの温かい連帯の言葉に心から感謝します。我々は,あなたのご親切に励まされています」
と台・豪の首脳にお礼の言葉をツイートするも、文氏への返信はなかった。
「単純なミス」と受け取れない韓国ネット民
文氏のツイッターは公式から認証されており、またツイートには安倍首相のアカウント名(@AbeShinzo)も含まれている。ブロックやミュートでもしていない限り、何らかの形で通知が飛ぶはずだ。もちろん見落とす可能性はあるが、「韓国だけスルー」されたことに疑問の声が相次いだ。
まずは韓国で騒ぎになり、「総裁選への悪影響を意識しているのでは」などさまざまな憶測が。少なくとも現地のネット民には、「単純なミス」と受け取る人はいないという(韓国のウェブメディア「インサイト」9日付記事より)。
日本のネット上では、8日ごろからこの事実が注目された。「親日」とされる台湾、またこのところ関係が良好なオーストラリアには「即レス」していることもあり、やはり首相が政治信条から、意図的に「スルー」したとの邪推が広がった。日本ユーザーの中には、文氏のツイッターに出向いて、「ムン大統領、心遣い誠にありがとうございます...!」「安倍総理大臣が文在寅大統領にお礼をしていなく、本当に申し訳ないです」など、首相に代わってお礼のリプライ(返信)を書き込む人も。
韓国メディアもこうした現象に注目し、大手紙・朝鮮日報(ウェブ版)は10日、
「安倍首相、文大統領のお見舞い文に四日間返事なし 日本のネットユーザー『欠礼を謝罪』 文大統領のツイッターにコメント数百件」
といった記事を配信している。
ツイート2本で「誠意」?
ようやく11日午前、安倍首相は、
「文在寅大統領,今般の台風及び地震に際して,心温まるお見舞いのメッセージをいただき,心から感謝します」
「現在、我々は被災者支援に総力を挙げているところです。我々は貴国と同様に台風や地震などの自然災害という課題を抱えており、今後も日韓間において様々な分野で協力を強化していきたいと思います。一日も早い被災地復旧・復興に向け全力で取り組んでまいります」
と2ツイートに分けて、文氏への感謝をつぶやいた(韓国語によるツイートも含めれば4ツイート)。台・豪首脳へのお礼がともにツイート1つ分、ということを考えれば、多少「色を付けた」形だ。ただ、返事が遅れたことなどには一切言及していない。