素材メーカー、M&Aで「クルマ」に迫る  好調、旭化成 株価は年初来高値更新

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   素材メーカー大手が、自動車部品メーカーを次々と買収している。

   国内のみならず、世界の大手自動車メーカーが電気自動車(EV)や自動運転車などの次世代カーの開発に余念がない。その動きを見越して、素材メーカーが自動車分野でのバリューチェーンの「上流」を目指しているわけだ。なかでも、注目は旭化成。株価も好調に推移している。

  • 素材メーカー、M&Aで自動車部品事業を強化(写真はイメージ)
    素材メーカー、M&Aで自動車部品事業を強化(写真はイメージ)
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参入障壁高い欧州市場、M&Aで突破口開く

   世界中の大手自動車メーカーの「EVシフト」で必要な部品や素材は変わる。すでにリチウムイオン電池やモーター関連の部材は世界的に活況を呈している。今のうちに、これらの市場を押さえることは将来の成長を左右する。次世代カーに携わるメーカーのすそ野は広く、これからが「本番」の成長著しい事業分野だ。

   それだけに、帝人や東レ、三井化学、三菱ケミカルホールディングスといった素材メーカーが続々とM&A(企業合併と買収)を仕掛けて、「クルマ」に打って出ている。

   三菱ケミカルは2017年10月、自動車向け炭素繊維強化プラスチック部品製造のイタリア、C.P.C.に資本参加。顧客には、英マクラーレン、伊フェラーリ、独ポルシェなどの名だたるメーカーが並ぶ。三井化学は独BMWや英ベントレーとマクラーレン、伊フェラーリなどとバンパーなどを開発、金型の設計・製造などを手掛けるアークを18年1月に買収した。

   東レは7月にオランダの炭素繊維加工大手、テンカーテ・アドバンスト・コンポジット・ホールディングスを、また帝人グループは2018年8月に複合材などのポルトガル、イナパル・プラスティコ、内装材の独ジーグラーを買収した。

   素材メーカーが欧州企業に秋波を送る背景には、ワケがある。欧州の自動車メーカーはドイツをはじめ、伝統的に「地場」を重視。研究・開発も、国内の大学との連携が強い。そのため、日本からの「参入」には低くない障壁があるとされる。

   その一方、排気ガス規制などで次世代カーの導入に積極的で、世界最大手の独フォルクスワーゲン(VW)をはじめ、有力メーカーがひしめく欧州市場を重視しており、その突破口としてM&A戦略を強化している。

旭化成 米セージ買収のねらいは?

   そうしたなか、旭化成は自動車内装材などを製造する米国のセージ・オートモーティブ・インテリアズ(サウスカロライナ州)を、7億ドル(約791億円)で買収すると2018年7月19日に発表した。発表資料によると、同社の株を保有するクリアレイク・セージ・ホールディングスから現金で取得。純有利子負債を含めた買収価格は10億6000万ドル(約1100億円)にのぼる。買収の目的を、クルマの電動化や自動運転などの新しい技術の登場で、自動車分野向けの事業は「大きな成長機会」が見込めるとした。

   米セージは、米国のほか、イタリアやポーランド、ブラジル、中国などに生産拠点がある。自動車内装材に用いる繊維製品の開発と製造販売を手掛け、シートファブリック市場では世界トップのシェアを有する。

   旭化成は、もともと米セージに人工皮革を納入するなどの取引があった。同社は16年から独デュッセルドルフ市とその近郊に関連拠点を相次ぎ開設。買収で欧米の自動車メーカーや部品メーカーとの距離を縮め、取引のパイプを太くすることで、今後の海外展開や素材メーカーの強み生かした提案を推進していく。

決算好調、年初来高値の更新続く

   じつは、旭化成はEVなどに使われるリチウムイオン電池のセパレータをすでに手掛けている。電池の材料は大きく、正極材と負極材、セパレータ、電解液の4つに分かれ、同社はこのセパレータが強みだ。セパレータは、リチウムイオン2次電池の正極と負極を絶縁する目的で使われるもので、旭化成はシェア50%を占め世界一(日本政策投資銀行調べ、2013年版)という。

   これを武器に、すでにEVメーカーと共同でコンセプトカーの開発などの自動車事業を進めており、2025年度の自動車分野向け売上高を、15年度との比較で3倍となる約3000億円を目標としている。

   2018年8月2日発表した19年3月期第1四半期(18年4~6月期)決算は、売上高が前年同期比9%増の4897億円、純利益が21%増の364億円で、ともに第1四半期としては過去最高を更新した。ケミカルや医薬・医療などが大幅増益となった。

   第2四半期(7~9月期)累計の売上高予想は従来の1兆370億円から1兆450億円(前年同期比8%増)に、純利益予想も625億円から785億円(11%増)にそれぞれ増額。この上方修正を受けて、株価も1月9日につけた上場来高値を約7か月ぶりに更新した。

   8月30日にはさらに高値を更新し、1653円を付けた。年初来安値が1260円(2月6日)だから、393円(76.2%)上げたことになる。直近の9月7日は前日比7円安の1565.5円だった。

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