ボクシングの元3階級制覇王者の井岡一翔(SANKYO)が、日本のリングと完全「決別」か。2018年9月8日(日本時間9日)に米国カリフォルニア州イングルウッドで行われるボクシングの「SUPERFLY3」に出場を予定している井岡が5日(日本時間6日)、当地のジムで練習を公開した。
17カ月ぶりの復活のリングに向けて順調な調整ぶりをアピールした一方で、左腕に入れたタトゥーをメディアに初お披露目。このタトゥーを入れた理由を井岡は復活への「決意」と語っているが、日本のリングと「決別」したと解釈されかねない。
「入れ墨ボクサー」も除去手術
日本において、タトゥーの入ったボクサーは原則、リングに上がることが出来ない。日本ボクシングコミッション(JBC)は、タトゥーが入っていることで観客に不快の念を与えるとして、タトゥーの入ったボクサーがリングに上がることを禁じている。ただ全てにおいて禁じているわけではなく、JBCはファンデーションのスプレーなどでタトゥーが入っている箇所を隠すことを条件に容認している。
元日本ライト級ランカーの大嶋宏成氏は、かつて「入れ墨ボクサー」として人気を博した。大嶋氏は暴力団の元構成員で、背中から肩にかけて入れ墨を入れていた。その後、更生してプロボクサーを目指したが、入れ墨が入っているためプロテストを受けることが出来なかった。そこで大嶋さんは入れ墨の除去を決意。臀部と太ももの皮膚を入れ墨の入った箇所に移植し、ようやくプロボクサーのライセンスを取得することが出来た。
タトゥーが入っているプロボクサーが存在するのは確かだが、ほとんどがボクシングを始める前に入れたもの。ボクシングを始めてからタトゥーを入れたものはレアケースにあたる。しかも世界の頂点を極めたボクサーが、現役中にタトゥーを入れたケースはおそらく皆無だろう。日本ボクシングのルールを間違いなく知っているであろう井岡の「決意」は、日本のリングと「決別」する「決意」にもとられかねない。
現役元王者のタトゥーは「記憶にない」
日本ボクシングコミッションはJ-CASTニュースの取材に対して「日本では、タトゥーが入っているボクサーは基本的にはリングに上がれないルールとなってます。ただ、実際にタトゥーの入ったボクサーがいることも事実です。そのようなボクサーが試合に出場する時にはファンデーションなどでタトゥーを隠すよう指導してます。井岡選手が日本のリングに上がるとしたら同様な指導をします」と説明。また、井岡のような元世界王者が現役中にタトゥーを入れたケースに関しては「記憶にありませんね」と話した。
2017年12月30日に引退した井岡は、現在、海外のプロモーターと契約しており日本のジムには所属していない。そのため日本ボクシングコミッションが発行するプロライセンスを取得していない。日本のリングに上がる条件として、まずは日本のジムに所属する必要がある。さらに、タトゥーを塗りつぶさなければならない。日本のリングに上がるには、復活の「決意」を捨て去ることになる。