「体操業界の人間ならあの二人の暴力関係がずっと続いているのは知っている」。「あの二人」とは、リオ五輪体操代表の宮川紗江選手(18)と速見佑斗コーチ(34)だ。
暴力・パワハラ問題のこうした背景をつづったのは、一般財団法人・新座市体操協会の浅香実津夫・代表理事。8年前、宮川選手と速見氏を引き合わせた人物である。
「暴力は1年以上前のことだ、と主張しているが...」
速見氏は2018年9月5日に会見を開き、「宮川選手に対する度重なる暴力行為によって、宮川選手は勿論、周りにいた選手、コーチに対し、不快な思いと恐怖を与えてしまったことを深くお詫び申し上げます」と謝罪。「これから私は、どういう小さな暴力であっても一切暴力行為を行わないことをここに誓います」とも述べた。
速見氏は8月15日、暴力行為で日本体操協会から無期限の登録抹消処分を受けた。同氏に長年指導を受けてきた宮川選手は同29日に会見を開き、暴力を受けたことは認めながら、「1年以上前のこと。今はない」「パワハラと感じていない」として、引き続き速見氏に師事したい意向も示した。
宮川選手が速見氏の指導を受けるようになったのは8年前だ。立教大学体操部出身の浅香氏が2010年、立教新座中学・高校を拠点として「セインツ体操クラブ」とその運営母体「一般財団法人・新座市体操協会」を立ち上げて代表となり、速見氏をコーチに招聘。宮川選手はセインツ第1期生として入部した。浅香氏が宮川選手と速見氏を引き合わせた形となる。
ただ、一般財団法人・新座市体操協会は1年後の2011年、セインツの運営権を立教側に手放しており、同協会と浅香氏は現在運営・指導していない。また、同氏がセインツに関わっていた最初の1年間に「体罰は全くなかった」という。
その浅香氏によれば、宮川選手の会見には大きな疑問点があった。セインツと離れた後で同協会が立ち上げた「ラビッツ体操塾」公式サイトのブログに、こうつづっている。
「紗江ちゃんの会見では、暴力は1年以上前のことだ、と主張しているが、今年の暴力が特に問題となっている。これについてどういう認識をしているのだろう?」
「今年の暴力」とは、2018年5月のNHK杯(東京体育館)で速見氏と宮川選手の間で起きたものだ。浅香氏は関係者から詳細にその時の様子を聞いたという。
「会場練習中にコーチから殴られ、それに対し選手も殴り返した。怒鳴り合いが続いて練習を途中で止めて帰った。翌日の試合の結果は酷いものだった...。という話はこちらまで届いています。これは日本体操協会が把握していることです。この事件が一番問題視されて、そこから8月の無期限登録抹消へと繋がっています」