発電所の「連鎖停止」はナゼ起きた? 北海道を襲った「全域停電」と過去の例

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   2018年9月6日未明に北海道で起きた最大震度6強の地震では、離島を除く北海道全域が停電した。

   北海道電力最大の火力発電所、苫東厚真(とまとうあつま)発電所が自動停止したのを引き金に、管内の電力の需給バランスが崩れ連鎖的に他の発電所も停止したためだ。過去にも、たった1か所のトラブルが引き金になって他の変電所や発電所にトラブルが波及し、広い地域での停電が繰り返されてきた。

  • 苫東厚真発電所が大停電の引き金になった(北海道電力のウェブサイトから)
    苫東厚真発電所が大停電の引き金になった(北海道電力のウェブサイトから)
  • 苫東厚真発電所が大停電の引き金になった(北海道電力のウェブサイトから)

他の火力発電再稼働でもピーク需要に追い付かない

   北電や世耕弘成経産相による説明を総合すると、地震発生時の管内の電力需要は300万キロワットで、そのうち約半分の165万キロワットを苫東厚真発電所が供給していた。同発電所が地震で自動停止したため、電力需給のバランスが乱れ、本来は一定に保つべき周波数が低下。周波数が乱れると機器が壊れる危険があるため、他の火力発電所も停止した。影響範囲は約295万戸に及ぶ。

   北電は4か所の水力発電所を再稼働して苫東厚真発電所に送電し、苫東厚真発電所の再稼働に必要な電力を確保。同発電所を再稼働した上で他の発電所も再稼働する段取りだったが、苫東厚真発電所にタービンの出火やボイラーの損傷が確認され、復旧には「少なくとも1週間以上かかる」(世耕経産相)という。他の火力発電所を再稼働させたり本州側から電力を融通したりして9月7日には290万キロワットを確保できる見通しだが、9月5日のピーク需要は380万キロワットだった。世耕氏は

「北海道全域が完全に復旧するには少なくとも1週間かかる見通し。一部のエリアには電力の供給が行われない期間が長引く可能性もあるため、病院などの重要施設への電源供給車の配備も早急に進める」

と話した。

1987年と2006年にも

   1987年7月には、猛暑による電力需要の伸びが原因で変電所にトラブルが発生。トラブルが起きた変電所は「系統」と呼ばれる電気を送るルートから切り離される。他の発電所からすると負荷が減少するため「空回り」に近い状態が起きて周波数が乱れるため、安全装置が作動して発電が止まった。この結果、停電の範囲は6都県の約280万戸に及んだ。

    2006年8月のケースもこれに近い。クレーン船のクレーンブームが旧江戸川上空を横断する送電線に接触し、3か所の変電所が停電。系統を切り替えてそのうち1か所が復旧したが、需給のバランスが崩れて品川火力発電所が自動停止。この影響で別の変電所が停電し、139万世帯に影響が広がった。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)

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