まだまだ全国的な猛暑が続くなか、気をつけなければいけないのが、熱中症。大事なのは水分と塩分の補給だ。メディアも連日のように、それらの補給を怠らないよう、注意を呼びかける。
そうなると、おのずと目が行くのが機能性の高い健康飲料。毎年、夏場は飲料メーカーにとって書入れ時で販売を押し上げるが、今夏は「トマトジュース」が売れに売れている。
ダイドードリンコ、自販機5倍増やし売り上げ7.5倍増
ここ数年、飲料メーカーは止渇効果だけではない「熱中症対策」飲料に個性的な商品を投入している。積極的な展開で、新たに「熱中症対策」飲料といったジャンルが確立されつつある。注目されているは、トマトジュースだ。
2018年夏、ダイドードリンコはズバリ! トマトジュース「さらっと。トマト」で熱中症対策を、とPRした。缶には目立つように「おいしく塩分補給」と入れ、熱中症予防には水分と同時に塩分補給が大切と訴求した。
同社では、熱中症対策は訴求していない従来の100%果汁のトマトジュース「おいしいトマト」(190グラム缶)に加えて、この2商品を展開。主力チャネルの自動販売機を中心に展開し、トマトジュースを置く自販機を昨年から約5倍(2品の合計)に拡大した。
ダイドードリンコは、「トマトジュース全体の売り上げは前年比で約7.5倍(8月20日まで)。自販機1台当たりでは約50%増えた計算になります」と話している。
市場調査の富士経済がまとめた「果実飲料、炭酸飲料、乳性飲料、嗜好品などの市場調査」(3月20日発表)では、トマト飲料を注目市場に取り上げた。2017年(見込)は、前年比33.6%増と大きく伸びて366億円。2022年には16年と比べて92.0%増の526億円に達すると予測する。
16年は、カゴメが健康機能をパッケージで訴求した「カゴメトマトジュース スマートPET」など4品を機能性表示食品としてリニューアル。これにより、トマト飲料の健康的価値が明確となり、他社商品も含め需要が急増したと分析。4年ぶりに市場は拡大した。
さらに17年は、テレビ番組などでトマトの健康への効用が取り上げられる頻度が増加。需要喚起が進んだほか、新たにサントリー食品インターナショナルが参入したことで市場が活性化した、としている。
カゴメは今夏も、2014年度から毎年、数量限定で展開する人気の「カゴメトマトジュース プレミアム」を売り込んだ。
じつは冴えない? スポーツドリンク
トマトジュース以外にも「熱中症対策」飲料は続々登場。キリンは2011年7月に発売した「世界のKitchenから ソルティライチ」を、18年5月にリニューアル。飲みやすいパウチタイプを用意して、旬のライチ×沖縄海塩の組み合わせで、おいしく水分と塩分を補給できる。
キリンによると、18年7月(単月)の出荷量は、トマトジュースを含む野菜飲料系で5%増、スポーツドリンク系で19%増。ソルティライチが25%増と「酷暑もあって、過去最高を記録した昨年を上回りました。一気に伸びた印象があります」と話す。
ちなみに熱中症対策飲料に加えて、豪雨災害に見舞われた西日本を中心に、ミネラルウォーターの伸びも著しく、全体で15%増、中・四国に限っては2倍増となった。
サントリー食品インターナショナルも、水分と塩分をしっかり補給できる「GREEN DA・KA・RA 塩 ライチ&ヨーグルト」、「なっちゃん ひんやり塩パイン」、「塩のはちみつレモン」を6月から発売。いずれも、冷凍してもおいしく飲めると推した。
そうしたなか、一方で水分補給の「主役」だったスポーツドリンクの市場が、減少傾向にある。食品マーケティング研究所によると、スポーツドリンクの2015年の売り上げ箱数は1億3030万箱。16年は1億2990万箱で、17年は1億2580万箱(前年比3%減)だった。
スポーツドリンクに代わって台頭してきたのはミネラルウォーター。なかでも、フレーバーウォーターが急成長。最近は一時の過熱ぶりがだいぶ落ち着き、成長が鈍化しているものの、大手飲料メーカーの関係者は「スポーツドリンクのシェアを奪って成長したのは、フレーバーウォーターが影響している」とみている。
ただ、そのフレーバーウォーターが「必ずしも熱中症対策にはならない」こともわかってきており、水分補給にはなるが、塩分やカリウムなどが不足する恐れがあるとされる。トマトジュースなどの「熱中症対策」飲料が、このスキに割って入ったようだ。