リオ五輪体操代表の宮川紗江選手(18)からパワハラを告発された塚原光男・日本体操協会副会長(70)と塚原千恵子・女子強化本部長(71)夫妻に対し、バルセロナ五輪銀メダリストの池谷幸雄氏(47)が「辞任ではなく永久追放です」と怒りの要求をした。
池谷氏は2018年9月4日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)に出演し、語気を強めて主張した。ただし、共演者からは冷静な見方も出たほか、インターネット上でも「ちょっと暴走しすぎ」といった指摘があがっている。
「お母さんはその辺が分かっていません」
協会は第三者委員会を立ち上げ、塚原夫妻のパワハラ疑惑を調査する。番組によれば、宮川選手の母親は「パワハラ認定されれば、『夫婦の辞任』『協会の新体制』を求めたい。認定されなければ『(対応は)現在検討中』」との意向。しかし池谷氏は、
「辞任ではまた復活するので、永久追放です。前回は辞任しましたが、またこのポジションに戻ってきましたから、辞任ではなく永久追放です。お母さんはその辺が分かっていませんが、辞任ではダメです」
と「永久追放」の言葉を連呼した。
「前回」とは、1991年の全日本体操選手権でのボイコット事件のこと。千恵子氏ら審判団の採点に疑義が呈され、出場選手91人中55人がボイコットする事態となった。その後、女子強化部長だった千恵子氏は辞任したが、現在は返り咲いている。池谷氏は「(91年に選手たちが)あれだけの意を決してやっても、(千恵子氏は)復活した経緯がある」ことを理由に、体操界に残ることを許さない考えだ。
司会の小倉智昭さんが「ただ、体操協会から退いても、朝日生命体操クラブの指導者であることは変わりない」と指摘したのに対し、池谷氏は
「永久追放すると体操には関われないので、他のコーチが来ることになる。そこまでしないと、(第三者委員会の聞き取り調査に対して)恐ろしくてみんな何も言えない」
と応じた。協会に限らず、朝日生命の指導者の地位からも降ろすべきという主張とみられる。
「慎重にファクトを積み重ねないと」
ただ、池谷氏の「永久追放」の考えには、冷静な指摘もあった。番組では、弁護士法人フラクタル法律事務所の田村勇人弁護士が「『永久追放』といっても、速見(佑斗)さん(への処分)には『事実を調査せずに拙速だ』という話がありました。日本スポーツ仲裁機構(編注:スポーツに関する紛争解決を担う)というところがあって、今年の処分取り消し率は100%です」とした上で、
「『永久追放』するなら慎重にファクトを積み重ねないと、その処分をあとで取り消されたら元の木阿弥です。事実を確定して初めて判断があるというのは、今の段階で念頭に置いておいてほしいです。宮川さんと塚原さんのどちらが正しそうかではなく、処分されても仕方ない程度の事実の立証が求められます」
との見方を示した。
また、小倉さんは「塚原さんご夫妻の現役時代の実績、選手を育成して五輪に輩出してきた実績を考えると、簡単に永久追放というのはできる状態じゃないと思うんだよね」との考えを述べた。
第三者委員会の調査はまだ始まっていない段階。池谷氏の考えに、ツイッターでは「私もその通りと思う」「激しくツッコんだ発言してる。組織下に居る人の多くがうんざりしてたことが伺える」といった賛同の声がある一方、「ちょっと暴走しすぎやろ」「もう中立性完全に失くしてるな。いくら嫌いな奴でも生活があるんだから、怪しいってだけじゃそう簡単に永久追放とかできんわな」といった指摘もある。