EUではサマータイム廃止の方向
サマータイムは戦後1948年、連合国軍総司令部(GHQ)の命令で導入されたが、労働強化になるとの反発で1951年までで取りやめになった。そして1990年代になると、地球温暖化対策、つまり省エネによるCO2削減として導入論が再燃し、1998年に橋本龍太郎内閣が地球温暖化対策推進大綱にサマータイムの検討をうたい、2008年に福田康夫内閣が「早期結論」を打ち出し、この間、超党派の議連などの議員立法を目指した動きもあったが、自民党内の根強い反対で挫折を繰り返してきた。今回、そうしたサマータイム積極論者が五輪を一つのきっかけに、息を吹き返した形だ。
世界に目を向けると、サマータイムを導入する国は多いが、最近のトレンドは見直しの方向。その代表が欧州連合(EU)で、現在は3月の最終日曜日に時計を1時間早め、10月の最終日曜日に元に戻す制度を実施し、加盟国に義務付けている。しかし、健康への悪影響などを理由にフィンランドが廃止を求めたのを受け、欧州委員会が7~8月に意見を公募したところ、460万件が寄せられ、84%が廃止を望んだことから、欧州委員会は8月31日、サマータイム廃止を加盟国に提案することを決めたというニュースが流れたばかりだ。
日本の世論も、こんな世界の動きも受け、変化してきた。安倍首相は7日の森氏と会談した際、サマータイムに前向きな考えを示す理由として、「国民の評価も高い」と述べたという。確かに、その直前のNHKの世論調査(3~5日)ではサマータイム賛成51%、反対12%、朝日の調査(4、5日実施)も賛成53%、反対32%と、過半数が賛成だった。
ところが、問題点が様々指摘されると反対が増え、テレビ朝日の世論調査(18、19日実施)では支持36%、支持しない53%と、賛否が逆転。読売の調査(24~26日実施)でも反対が50%と、賛成の40%上回った。「当初は、『オリンピックのためなら少しくらい面倒でも』という気分で賛成が多かったのが、中身が詳しく伝わってムードが変わった」(大手紙世論調査担当者)といった分析が聞かれる。