名門パイオニアが経営悪化 「事業継続に疑念あり」

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   オーディオの老舗として親しまれ、現在はカーナビ大手のパイオニアの経営悪化が深刻だ。2019年3月期中に返済期限が来る借入金353億円(リース債務を含む)の借り換えにメドが立っていないとして、先に発表した18年4~6月期決算の財務諸表で「継続企業の前提に重要な疑義が生じている」と注記せざるをえなくなった。自動車部品大手カルソニックカンセイなど複数社に支援を要請しており、再建への正念場を迎えている。

   8月6日発表の4~6月期決算は、売上高こそ前年同期比0.6%増の838億円だったものの、営業損益は15億円の赤字。純損益は66億円の赤字と、前年同期の20億円から3倍以上に拡大した。2019年3月期通期も50億円の営業赤字を見込み、事業の継続に懸念ありとの注記をつけた。

  • パイオニアのホームページより
    パイオニアのホームページより
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かつて、オーディオといえば...

   かつて、オーディオといえばパイオニアというほどの名門企業も、それでは食えなくなり、転身に挑んできた。1997年、家庭用では初めていという大型プラズマディスプレーを発売して先陣を切り、競争激化をうけ2004年にはNECのプラズマパネル事業を買収し、拡大路線に走った。しかし、有力ユーザーと期待したソニーは韓国サムスン電子と合弁で液晶パネル製造に転じるなど、テレビ市場で液晶の優勢が確立。リーマンショックを受けて経営危機に陥るに及んで、プラズマ事業から撤退した。

   代わってパイオニアが勝負をかけたのがカーナビを中心とした車載機器事業だ。2015年にはここに経営資源を集中するとして、優良事業だったDJ機器も売却した。だが、GPS機能が搭載されたスマホが急速に普及。パイオニアはカーナビの中でもクルマに後付けする「市販品」が主力で、自動車メーカーが生産段階で装着するOEM(相手先ブランドによる生産)品へのシフトが遅れたこともあって、経営は次第に窮地に追い込まれた。2017年、18年3月期と2期続けて50億円を超える最終赤字を計上、19年3月期は、これまでなんとか黒字を確保してきた営業損益が赤字に転落する見通しなのは、先に説明した通りだ。

   カーナビが苦しいのは競合他社も同じ。クラリオンは業績悪化で18年1月に450人規模のリストラを実施。富士通はカーナビ子会社をデンソーに売却。アルパインも、親会社のアルプス電気との経営統合に動くといった具合だ。

「複数の企業と提携について協議」

   今回の決算発表後、パイオニアの経営への不安感が一気に広がり、外部からの支援の観測が飛び交い、8月9日、日経の報道を受け、「カルソニックカンセイを含め複数の企業と提携について協議している」と発表した。

   外部資本を受け入れ、車載機器などを開発するための資金確保を図るということだが、具体的には、まず自動車メーカー向けカーナビなどのてこ入れが待ったなしだ。その先にあるのが自動運転で、車の「目」となるセンサーや、自動運転に欠かせないデジタル地図データなどの蓄積を生かすためにも、資金が必要になる。

   スポンサー候補のカルソニックカンセイは運転席周辺の内装製品や電子部品などを扱っており、カーナビを主力とするパイオニアとの相乗効果が見込めるというのが一般的な評価。同社は日産自動車の子会社だったが、ゴーン革命の中で切り離され、2017年3月に米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)傘下に入っており、パイオニアがカルソニックカンセイの力を借りる場合、どこまで独自性を維持していけるか、行方が注目される。

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