体操のリオ五輪女子代表・宮川紗江選手(18)が、日本体操協会の塚原千恵子・強化本部長(71)らからパワハラを受けたと訴えている問題で、塚原夫妻が2018年8月31日、直筆署名入りの文書で謝罪、反論した。
文書では、宮川選手と面談した時に「録音」していたことを告白。第三者委員会に提出する予定だとしているが、なぜパワハラの訴えを受けた側が録音していたのかと、ネット上で疑問の声が飛び交っている。
録音を「第三者委員会に提出予定」
文書の内容を詳報した31日昼放送の情報番組によると、冒頭には「私たちの言動で宮川紗江選手の心を深く傷つけてしまったことを本当に申し訳なく思っております」と謝罪の言葉があった。
続けて、宮川選手が具体的にパワハラ被害を訴えていた発言について、塚原強化本部長が持論を展開。「(速見コーチより)100倍よく教えられる」との発言については、「暴力行為があったため『あのコーチがダメ』とは言いましたが、私が『100倍よく教えられる』とは言っておらず」と否定した。
一方、「五輪に出られなくなるわよ」との発言については「確かに宮川選手にそのようにお伝えしたのは事実です」と認めた。ただ、直近の成績が振るわずケガしていたことを踏まえ「『このような成績や現状のままだと五輪に出られなくなるわよ』と伝えた」と、認識に齟齬があるとした。
こうした反論文書の中でも、特にインターネット上で注目を集めた段落がある。塚原強化本部長が「宮川選手の会見では、私が終始高圧的な態度とありましたが、私の態度に問題があったかと考えており、大変申し訳なく思っております」と詫びた上で、こう続けたのだ。
「ただ、今後、第三者委員会に提出予定である、私たちが保有している宮川選手との録音内容をお聴きいただければ、私が決して高圧的な態度ではないということはお分かりいただけると思っております」
要するに、夫妻は宮川選手と面談した際に録音していたというのだが、ツイッターではこの行為に、「なんで宮川選手との会話録音していたの」「塚原氏はなんで録音した?」と疑問の声が多く寄せられている。
宮川選手も疑問「どうして録音を」
こうした夫妻の反論文書に、宮川選手は31日放送の情報番組「直撃LIVEグッディ!」(フジテレビ系)のインタビューで見解を述べた。夫妻の「録音」については「まったく気付かなかったですし、どうして録音をしていたのか、すごく疑問」とポツリ。「やっぱり対立する気があるのかな」と不信感を強めていた。
宮川選手の代理人弁護士を務める山口政貴氏は、情報番組「ミヤネ屋」(読売テレビ)に生出演した際、司会の宮根誠司さんから「パワハラを感じていた宮川選手が録音するなら分かるんですが、塚原さんが録音しているというのは...どうですか?」と聞かれ、夫妻の「録音」の意図をこう推測した。
「真意は分かりませんが、パワハラと思っていない方が録音するということは、後々何か問題になるんじゃないかと思って差し障りのないところだけ録音したんじゃないかという推測が働いちゃいますよね」
宮根さんは「全体的な録音なのか、(都合の)いいところだけを録音しているのか、そこもありますもんね」と返答し、スポーツライターの青島健太さんは
「出てこなければ何とも言えないんですが、(夫妻の)反論にあたっては、かなり自信をもっている部分だと思いますね」
と考えを述べた。
「教え子がこう言っているよ、という証拠」説も
一方「直撃LIVEグッディ!」では、司会の俳優・高橋克実さんが塚原夫妻の狙いを推測した。
「(宮川選手を)呼び出して、録音しているということは、速見コーチの暴力を選手本人もこうやって認めているんだというものを、証拠として録りたかったんじゃないでしょうか」
番組の三田友梨佳アナウンサーが「処分を下すにあたって、何かの証拠という形で残していたのかもしれないですよね」と応じると、高橋さんは
「直で教わっている教え子がこう言っているよ、という証拠を録るためのもんじゃないですかね。そうじゃないと、そっち側が録るというのはあんまり...」
と疑問を呈していた。