東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業を安全かつ着実に進めていくために、現場の環境改善がノンストップで続けられている。
放射線量の低減はもちろん、作業員の健康を守るための徹底した被ばく線量管理や夏季の熱中症対策、温かい食事がとれる大型休憩所の整備と、改善の努力がこの7年間積み上げられてきた。
敷地内の96%は一般作業服で作業できる
現在、福島第一原発敷地内の96%は「グリーン(G)ゾーン」と呼ばれる、一般作業服での作業が可能なエリアだ。J-CASTニュース記者はGゾーンの取材にあたり、長袖、長ズボンの普段着に薄手のベスト、軍手、マスク、ヘルメットの下に被る白いメッシュ帽を身につけ、青い靴下を二重にして作業靴に履き替えた。ベストは2つの胸ポケットに構内入構証と線量計を入れる用途のもので、バスを降車して取材する際にはヘルメットをかぶった。全身を覆う「防護服」や全面マスクは不要で、一般的な建設現場や工場見学の際の安全装備と変わらない印象だった。
「敷地内の96%」には、原子炉建屋の近くも一部含まれる。記者はこの服装のまま、1号機から80メートルの地点まで徒歩で近づき、しばらく滞在することができた。さらに2号機と3号機の間を通る道も、今では一定時間バスから降りて見学可能だ。確かにこの2か所は他と比べて線量が高く長時間はとどまれない。それでも少し前までは、厳重な装備でないと近づくことすらできなかったのだから、環境の改善がうかがえる。
作業員にとっても、心身ともに負担はずいぶん減ったはずだ。事故発生からしばらくは、作業員は車で片道約40分の距離にある「Jヴィレッジ」(楢葉町)で防護服に着替え、往復していた。暑い日の作業では、全面マスクの中に汗が溜まるほどの厳しい環境で、それでも放射性物質による汚染のリスクを避けるため、移動中も全面マスクを脱ぐことができなかった。現在、着替えは敷地内の建物で可能なうえ、以前とは比べ物にならないほど軽装で済む。