若手農家が挑む福島米「天のつぶ」「食の安全」のために打った一手とは? (後編)

提供:東京電力ホールディングス

   福島市内で米農家を営むカトウファームの加藤晃司さん、絵美さん夫妻には夢がある。自身が100町歩(100万平米)の大規模農家になることはもちろん、福島産米の「天のつぶ」がおいしいお米として認められ、全国の人に食べてもらうこと。そして、福島の米づくりの担い手が増えて、地域が活性化することだ。


   福島第一原子力発電所の事故から7年が過ぎたものの、「食」への不安はなおも残る。「一日も早く、それを払しょくしていきたい」と意欲を燃やす二人に、そのための「一手」を聞いた。

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加藤晃司さん、絵美さん夫婦は、「1日も早く、福島の食が安全であることを伝えていきたい」と話す。

「福島産」への不信感、わかっていても「つらい」

―― 福島の「食」への風評被害について、お聞きします。お米への放射線の影響について、東京と地元との「温度差」をどのように見ておられますか。

加藤絵美さん 「原発事故後、福島県ではお米に対する検査体制を厳しくしましたし、それが『福島』の食の安全、安心に繋がることだと理解していましたから、みんなで協力して日頃からこんなことをやっている、こうやってお米を安心、安全に提供できるようにしているということを、SNSなどを使って発信していきました。
 ただ、最初のうちは『安全、安心』などと、私の口からはとても言えませんでした。私自身、いろいろ言っても怪しいって思う人のほうが当たり前だと思っていましたし、『大丈夫です』と太鼓判を押す自信もありませんでした。東京などへ出向いてお話しする機会をいただくのですが、学者でもないので放射線の影響を説明することもできませんし、私がどんなに『安全です』と強調しても説得力がありませんよね。ずうっと、力不足を感じていました。
それに、最近のオーガニック志向で口に入る食材に気を遣う人が増えていますから、安全性が認められないと手にとってももらえないんです。福島産にそういった不信感やネガティブなイメージがあることは理解しているのですが、やっぱりつらいですよ」

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福島産への不信感「やっぱり、つらい」(加藤絵美さん)
―― 2018年2月、カトウファームさんが世界認定圃場(グローバルGAP)に認定されました。その狙いはどこにあるのでしょうか。

加藤晃司さん 「グローバルGAP(Good Agricultural Practices:農業生産工程管理)の取得に取り組みはじめた理由は、風評被害の払しょくがあります。まず自分たち自身が、グローバルGAPを取得して、周りも追随してくれたら、福島全体がよくなると思っています。
グローバルGAPは、安全で品質のよい農産物を流通させるための、世界的な基本認証であり、日本国内で取得できる唯一の国際標準です。いわば、農業における品質管理の世界認証ですね。本来はそれをことさら大きな声で言う必要はないのでしょうが、一日でも早くお客さまに信用いただけるのであれば、このグローバルGAPの取得をアピールしていくことで、多くの人に『安全、安心』であることをわかってもらえるのではないかと思っています」

―― グローバルGAPの取得にはご苦労されたのではないですか。

晃司さん 「グローバルGAPは水質や土壌などの検査なのですが、農作物への信頼を得るために300もの検査項目をクリアする必要があります。また、検査は毎年あり、更新し続けなくてはなりません。クリアするためには、一にも二にも記録することが大事なんです。たとえば水質も、その一つ。専門機関に委託して、現地に来てもらい検査員が水を取り、大腸菌の数などを調べます。
はじめに苦労したものは、片付けですね。認証基準は土壌や水質だけではありません。米を貯蔵しておく倉庫なども、クリアしなければならない基準があるのです。倉庫をキレイに保つための土台作りが大変でした。
こうした取り組みが『食』の安心、安全を証明するとともに、そのために『着実にやっていることの証明』になりますし、『最善を尽くしている』ことの証明になります。私は福島県を、全国一の取得者数にしたいんです」

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