五輪体操の金メダリスト森末慎二氏(61)も、「暴力・パワハラ」をめぐる「選手VS体操協会」の対立に参入した。現執行部体制に対し、「イエスマンだけを(周囲に)置いている」と批判を展開し、選手擁護の立場を鮮明にした。
暴力を理由にコーチが処分された宮川紗江選手(18)が、処分を下した日本体操協会の方から逆に「パワハラ」を受けたと会見で述べた問題は、協会幹部による反論を招くなど混迷の度合いを深めている。そんな中、森末氏が指摘した協会の「闇」とは......
「言うことをきく人たちしか存在しないように見えます」
ロサンゼルス五輪(1984年)の体操男子、鉄棒で金メダル、跳馬で銀、団体で銅メダルをとった森末氏は2018年8月30日、「ビビット」(TBS系)に出演した。
番組では、前日の宮川選手の会見の模様を詳しく紹介。宮川選手は
「(塚原千恵子)強化本部長の周りには、言うことをきく人たちしか存在しないように見えます」
「(言いたいことを言えない選手やコーチが多くいるなど)私はこれこそ権力を使った暴力だと感じます」
などと、はっきりした口調で協会批判を展開した。
森末氏は、この会見について「勇気がいったこと」と評価し、「(こうした問題が表に)出てほしいと思っていた」と、協会内に問題があったと認識していたことを明かした。
また、今回、名指しでパワハラの主と指摘された塚原・女子強化本部長と、塚原光男・副会長の夫婦2人が協会の要職を占めている現状について、
「協会内で夫婦でこの位置にいる事自体、何かおかしいですもんね」
と違和感を表明した。さらに、現在のナショナルチームのコーチ陣には、塚原本部長が女子チームの監督を務める朝日生命体操クラブのコーチらが「結構入っている」と指摘し、
「ノーという人は排除して、イエスマンだけ(周囲に)置いているということでしょうね」
と、会見での宮川選手の発言を追認するような現状認識を示した。
塚原副会長は「ウソが多い」と反論
番組では1991年にあった全日本体操選手権の「ボイコット事件」を紹介。当時、塚原氏が中心となっていた審判団の採点姿勢に不満が噴出し、91人中55人がボイコットする事態となり、塚原氏は辞任に追い込まれた。この事件について、森末氏が
「点をつける審判が(塚原氏の)自分側だと、そこ以外の選手は点が出ない。なら、やってもしょうがない、となった」
と当時の空気を解説。スタジオでは、日本ボクシング連盟で問題となった、理事長側に有利な恣意的判定である「奈良判定」を例に出し、
「奈良判定と変わらない」
と感想を述べる出演者もいた。
一方、塚原副会長は30日朝、宮川選手会見に反論し、 「なぜ彼女があんなうそを言うのか。ウソが多いから今日プレスリリースをします。(会見は)必要だったらします」と報道陣に語った。
混迷を深める体操協会問題の着地点はまだ見えてこない。