タレントの山口もえさん(41)の「いじめ」に関する発言が、インターネット上で議論を呼んでいる。
山口さんは2018年8月28日放送の「ザ!世界仰天ニュース」(日テレ系)で、いじめ問題について「人生を長い意味で考えたら、辛いけどそれも一瞬」などとコメント。これにツイッターで、「何も分かってない」との否定的な反応が相次いだのだ。
本人はすでに「言葉足らずで真意が伝わらなかった」とブログで謝罪しているが、今回の発言はどこに問題があったのか。J-CASTニュースが、いじめ相談に詳しいカウンセラーの見解を尋ねた。
「言いたいことはとっても分かるんだけど...」
この日の番組は「学校の闇スペシャル」と題し、実際に起きたいじめトラブルを紹介。番組の後半では、新体操の強豪校に入学した女子中学生が、部活内での陰湿ないじめに遭ったとのエピソードを再現ドラマで伝えた。
VTR間のスタジオトークでは、出演者の実体験などを交えつつ、各々がいじめ問題について持論を展開。その中で山口さんは、自ら「1つ言ってもいいですか?」と切り出し、
「人生が90歳までだとして、嫌なことがあるじゃないですか。例えば、(いじめが)中学3年間って思うと、90分の3年なんですよ。だから、人生を長い意味で考えたら、この時間すごく辛いけど、頑張ろうって思うんです」
との持論を展開した。これに番組MCの中居正広さんが、仮に中学生の悩みだとすれば「残り80年以上あるワケですしね」と応じると、山口さんは、
「そうなんです。そうやって人生を見ると、辛いけどそれも一瞬かなって思います」
と訴えた。
こうした山口さんの発言に、視聴者から反発の声が次々と寄せられた。番組の放送中から、ツイッターやネット掲示板に、
「思春期に心に傷を負ったら人生変わることもあるんだよ」
「いじめられている本人からしたら一瞬どころか永遠にすら感じると思う。それで自傷や自殺する人もいるのに」
「山口もえさんが言うたった3年のいじめは、それだけで人を殺せるんだよ」
との書き込みが相次いだのだ。そのほか、「言いたいことはとっても分かるんだけど、絶対苦しんでる本人には言ってはいけないやつ」といった複雑な反応を示すユーザーの姿も目立っていた。
「少しでも楽になるのではないかなと思って」
こうした反応を受け、山口さんは翌29日のブログで「言葉足らずで真意が伝わらなかったことをお詫びいたします」と謝罪した。
ブログではまず、番組の再現VTRで紹介された女子中学生が「いじめられた3年間をほんの一瞬だと言いたかったわけでは決してありません」として、
「辛い経験を乗り越えたのちにその期間も長い人生の中で見るとほんの一瞬だったんだなと思えたら 心が少しでも楽になるのではないのかなと思っての発言でした。ただ その瞬間を乗り切れる人ばかりではないと言う事をうまく伝える事が出来ませんでした」
と発言の真意を説明。さらに「傷ついた心はすぐには戻らないと思います。辛い思い出も消えることはないのかもしれません」と続け、
「だからこそほんの少しでも楽になってほしいと思い発言したつもりでした。誰もが大切な人が傷ついている姿を見たくありません。この世の中からどんなに小さないじめだってなくなることをせつに願っています」
との思いをつづった。
山口さんの持論が「重圧」に?
なぜ、今回の山口さんの発言は反発を招いたのか。
精神保健福祉士・スクールソーシャルワーカーで、NPO法人「東京メンタルヘルス・スクエア」理事の新行内(しんぎょううち)勝善さんはJ-CASTニュースの取材に対し、
「いじめは3年などの短期間では終わりません。大きなトラウマとして残りますし、その後の人生に大きな影響を与えるものです。今回の発言は、そうした視点が欠けていたのではないかな、と感じます」
と指摘する。
その上で、山口さんが言うようにいじめ体験を長期的、俯瞰的に捉えるようにアドバイスすることは「確かに、カウンセリングの中で行うこともあります」。ただ、
「ですが、事前に相談者との信頼関係をしっかりと築いていることが大前提です。相手の辛さや大変さを十分に理解していない状況で、そうした見方をアドバイスしても、視野を広げてもらうことは難しいです」
とも付け加えていた。
その上で新行内さんは、山口さんの言葉が逆にいじめに悩んでいる人の重圧になってしまう可能性も「考えられます」として、
「この部分は、本人が長い時間をかけて整理をし、自分でどのように捉え直すかが大事です。実際、いじめの経験を乗り越えられないことを、ずっと悩み続けている人も多くいますから」
としていた。
その一方で、新行内さんは「山口さんは芸能人で、専門家ではありません。いくら発言に責任が伴うとはいえ、今回の件で山口さんがネット上で過度に批判されることも、ある意味でのいじめにならないか心配です」とも話していた。