53歳で亡くなった漫画家・さくらももこさんは、生前に作詞家としても活動していた。
関わった作曲家は豪華な顔ぶれだ。織田哲郎さん、筒美京平さんといった名作曲家や大滝詠一さん、細野晴臣さん、忌野清志郎さん、桑田佳祐さんなどロック・ポップスの重鎮たちとの楽曲制作の経験もある。
巨人の優勝と引き換えに
さくらさんのアニメ作品である「ちびまる子ちゃん」ではOP曲としてさくらさんが作詞、大瀧詠一さんやコーネリアスの小山田圭吾さんが作曲した楽曲が使われた。また、1990年、第32回日本レコード大賞を獲得した「おどるポンポコリン」も泉谷しげるさん、木村カエラさん、トータス松本さんらがカバーした。
こうした豪華な顔ぶれが実現したウラには、さくらさん自身の働きかけもあったという。
さくらさんが歌詞を手掛け、「ちびまる子ちゃん」で植木等さんが歌った「針切じいさんのロケン・ロール」(シェブ・ウーリーのカバー、さくらさんは訳詞)と渡辺満里奈さんが歌う「うれしい予感」の2曲に参加した大滝詠一さん。さくらさんは以前から大ファンだったそうだ。
2014年に集英社から発売されたさくらさんのムック本「おめでとう」によると、ダメ元で大滝さんに制作を依頼したところ、「(読売)ジャイアンツが優勝したら」という条件でテーマソングを作ると返答があった。
さくらさんは「あんなに白熱して野球を観た事はない」と語るほどジャイアンツを必死に応援した。奇しくも約束したと思われる1994年は「10.8決戦」と言われるリーグ最終戦で勝ったチームがセ・リーグを制するという稀有なシーズンだったが、見事優勝を果たした。すると、決まった直後に、
「約束通り、まる子ちゃんのテーマソングを作ります」
とファクスが届き、先の2曲が誕生した。