罰金の支払い総額12億円
国は開門と開門差し止めという相矛盾する司法判断の間で板挟みの形になっていたが、今回の判決が確定すれば「ねじれ」は解消される。開門を履行しない国に科せられていた1日90万円の罰金の支払いはこれまで総額は約12億円に達するが、今回、支払い停止も認めた。
今判決は、法律論としては以下のような理由だ。
そもそも確定判決への異議が認められるには、民事執行法の規定で口頭弁論終結後に生じた事情変更が要件になる。これについて今回の判決理由は、「漁業法は共同漁業権の存続期間を10年と定めている」と指摘したうえで、漁業者らの共同漁業権の免許期限は2013年8月で、その後に新たな免許が下りたものの「2013年8月に免許が切れた漁業権とは別だ」と判断した。漁業者側は「漁業権は再取得したため権利は続いている」と反論したが、認められなかった。
判決について、毎日(7月31日)、朝日(8月1日)、東京(同)、読売(2日)が社説で論じているが、現実的対応として判決に理解を示す読売と、判決に批判的な3紙に、はっきり2分された。
3紙は、今回の決定が、漁業者側には到底受け入れられないものだという認識で一致する。「確定判決に従わない国の姿勢を追認した形」(毎日)の判決には、東京は「司法の姿勢として、まずは確定判決をずっと履行しないままで、先延ばしにしてきた国側を厳しく指弾すべきではないのか。確かに国側は金銭的な解決策を出したが、漁業者側が応じないからといって、司法が国側寄りの現状維持を選択しては自己否定と同じだ」、朝日も「裁判所が下し、政府も受け入れたはずの結論を、その政府があれこれ理由をつけてひっくり返しにかかり、あろうことか裁判所も追認する――。国のあり方そのものへの不信を深める異常な事態である」と、裁判所のあり方も含めて最大限の表現で批判する。
他方、読売は「福岡高裁は2度、和解を勧告した......が、訴訟当事者の漁業者が拒否した。歩み寄りの好機を逸したのは残念だ」と嘆き、「漁業者も国も、有明海の再生を目指す点では一致している。漁業と農業の共存へ向けて、最高裁では、和解を含めた包括的な解決を目指してもらいたい」と和解への期待を前面に押し出す。