対米貿易交渉のツボ 「EUに見習うべき」これだけの理由

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   日米両政府は2018年8月9日(米現地時間)から2日間、新しい閣僚級の貿易交渉(FFR)を開き、9月の次回会合以降、具体的な貿易促進策を作る方向となった。ただ、貿易交渉を巡るトランプ米大統領の最大の狙いは、11月の米中間選挙で支持を集めることだとされる。このため「日本も、同じように貿易交渉をしている欧州連合(EU)のやり方を参考にすべきだ」(通商関係者)との声が強まっている。

   日米の貿易交渉では、米国側が自由貿易協定(FTA)の締結を念頭に、2国間交渉を求めたのに対し、日本側は多国間の枠組みである環太平洋経済連携協定(TPP)に米国が復帰するよう強く要請、交渉の進め方では一致しなかった。一方、米国は日本の基幹産業である自動車とその部品に対する輸入制限をちらつかせながら、農産物の市場開放を迫っており、今後も難しい交渉になることは間違いない。

  • 貿易交渉の行方に注目が集まる(写真はイメージ)
    貿易交渉の行方に注目が集まる(写真はイメージ)
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支持層へのアピールができさえすれば...

   こうした状況に対し、EUの対米交渉を見習う必要がある、という指摘が通商の専門家らの間で広がっている。米国が6月、EUの鉄鋼などに追加関税を発動したことで、EUは対抗策として米国の二輪車や農産品などに追加関税をかけた。険悪な関係になった米EU間であわや貿易戦争に発展か、という緊張状態の中、7月末に開かれたトランプ大統領とEUのユンケル欧州委員長との会談では、焦点だった自動車を除く工業製品の関税撤廃や米国産大豆の対EU輸出拡大などで合意。自動車への追加関税については事実上、棚上げする形でひとまず結着した。

   トランプ政権はこれを受け、大豆の輸出拡大などを米国内でアピールした。だが、米国産大豆はそもそも、トランプ大統領が中国に仕掛けた貿易戦争で、中国が報復関税をかけ、中国で他国産大豆の輸入が増えた結果、価格が下落している。ある農業関係者は「米国産大豆は値段が下がったから欧州で輸入が増えているだけで、EUの政策として増やしているわけではない」と話す。つまり、トランプ氏は自身の支持層である大豆農家に成果を示すことさえできれば交渉の内容などどうでもよかった、という結論が導かれるのだ。

焦点の一つは牛肉

   日米交渉についても、現在の米国ではトランプ大統領のトップダウンですべてが決まるため、大切なのは閣僚交渉ではなく、9月下旬に開催される予定の安倍晋三首相との日米首脳会議だ、とも言われている。「首脳会談で、トランプ大統領が支持者に成果としてアピールできるものを日本側がいかに提示できるかにかかっている」とある通商関係者は指摘する。

   とはいえ、日本も簡単に米国に譲歩できる材料があるわけでもない。焦点の一つは牛肉と言われる。米国を除く11か国の協定「TPP11」は2019年にも発効する可能性があり、オーストラリア産の牛肉の関税は現在の38.5%から発効16年目に9%まで引き下げられるので、オーストラリアのライバルの米国は圧倒的に不利になる。日本側は米国との交渉でも、最終的にこのTPPの線を超える引き下げには応じない考えだが、米国は自動車への関税引き上げを絡めて牛肉関税の大幅引き下げを迫ってくる可能性もあり、米国の中間選挙までという限られた時間でトランプ大統領の狙いにうまくはまる材料を見つけるのは簡単ではない。

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