スズキ、マツダ、ヤマハ発動機の3社の検査で不正が発覚した。工場で出荷前の車や二輪車の排ガスと燃費を測定する抜き取り検査の条件がいい加減だったのだ。2018年8月9日、発表した。SUBARU(スバル)と日産自動車でも排ガス・燃費の測定データ改ざんが発覚しており、国土交通省が指示した社内調査で不正がわかった。
自動車メーカーは、完成した新車を出荷する際、工場で100台に1台程度の割合で排ガスや燃費を調べる「抜き取り検査」を実施しているが、この検査の工程で、データを測定するために車を走らせる速度や時間が基準を超えていた。検査条件を満たさずに得られたデータは「無効」とすべきだが、「有効」として処理していた。3社の発表によると、不正は計6480台で見つかり、うちスズキが6401台と大半を占める。
リコールは実施せず
各社ごとの不正の主な中身は次のようなものだ。
スズキは、2012年6月~18年7月に静岡県内の湖西、相良、磐田の3工場で検査した自動車計1万2819台の49.9%で不正を確認。主力の軽自動車アルトなど30車種で不正があった。検査に関与した検査員19人は、不正にあたると認識していなかったという。検査条件を確認するのに必要な機器の性能が不十分で、検査員の判定ミスを招いたと説明している。
マツダは2016年10月以降に検査した1875台のうち、スポーツ用多目的車(SUV)の「CX-5」など自動車10車種の72台(3.8%)で不正が発覚。検査員が排ガスデータの数値だけに気をとられ、検査条件が有効かどうかの確認を怠るミスが原因という。
ヤマハ発動機も、2016年1月以降に検査した335台のうち2輪車7台(2.1%)が不正だった。検査の際にバイクを走らせる速度について、検査が無効となる条件をそもそも経営陣も現場も認識せず、検査員は速度をすぐに修正すれば有効な条件になると思い込んでいたという。
3社の完成検査問題が明らかになったのは、2017年秋以降に日産とスバルで無資格者検査が発覚したことが背景にある。その後、両社で燃費・排ガスのデータを書き換える不正が明らかになった。これを受けこの7月、国が各メーカーに調査を求め、新たに3社の不正も分かった。
3社はデータの書き換えはなかったとして、カタログに記載した排ガスや燃費の値を修正する必要があるほどの不正でないため、リコール(回収・無償修理)は実施しない。
経営責任のけじめは?
こうした不正で、大きな問題になったのが2016年4月に明るみに出た三菱所自動車だ。この時は、完成車の抜き取り検査ではなく、そもそも国交省への型式申請の段階で「eKワゴン」など軽4車種のカタログ燃費を実際よりも良く見せるため、意図的に燃費の走行データを改ざんしていた。不正発覚後、国交省が燃費を測り直したところ、実際の燃費はカタログより最大16%悪かった。さらに同年8月、他の9車種の燃費を調べ直したところ、新たに8車種の燃費がカタログ記載の燃費を最大8.8%下回っていることも分かった。このため、三菱自はユーザーに1台当たり3万~10万円の補償金を支払った。
スズキも同年5月に燃費の測定方法で不正が発覚したが、燃費を良く見せることはしていなかったので、カタログの燃費は上回っていた。
このように、同じ「不正」といっても、「罪深さ」には相当の差があり、件の三菱自は悪質さが突出しているのは衆目の一致するところ。
とはいえ、長年積み上げてきた制度への信頼を揺るがすという意味で、不正を行っていたメーカーの責任は重大。今回明らかになった完成車の工場での検査は、道路運送車両法に基づき国土交通省に大量生産を認められた設計(「型式」)通りの数値に収まっているか、確認するもの。完成車の安全性は国が保証する建前だが、各メーカーの資格をもつ検査員が完成検査を代行することで車検場に持ち込む手間を省き、大量生産を可能にしている。メーカーがきちんと調べるとこを大前提にした、自動車の品質管理の根幹にかかわる制度なのだ。スズキの場合、2016年の不正の際、法令順守を誓ったのに、結局、製造現場に徹底されていなかったことになる。
この間の不正では、スバルの吉永泰之社長(当時)が6月の株主総会後に代表権と最高経営責任者(CEO)を返上した。今回の3社は、データの書き換えがあったスバルとは異なるが、そのあたりも勘案して経営責任について、いかなるけじめをつけるかも、今後の注目点だ。