経営責任のけじめは?
こうした不正で、大きな問題になったのが2016年4月に明るみに出た三菱所自動車だ。この時は、完成車の抜き取り検査ではなく、そもそも国交省への型式申請の段階で「eKワゴン」など軽4車種のカタログ燃費を実際よりも良く見せるため、意図的に燃費の走行データを改ざんしていた。不正発覚後、国交省が燃費を測り直したところ、実際の燃費はカタログより最大16%悪かった。さらに同年8月、他の9車種の燃費を調べ直したところ、新たに8車種の燃費がカタログ記載の燃費を最大8.8%下回っていることも分かった。このため、三菱自はユーザーに1台当たり3万~10万円の補償金を支払った。
スズキも同年5月に燃費の測定方法で不正が発覚したが、燃費を良く見せることはしていなかったので、カタログの燃費は上回っていた。
このように、同じ「不正」といっても、「罪深さ」には相当の差があり、件の三菱自は悪質さが突出しているのは衆目の一致するところ。
とはいえ、長年積み上げてきた制度への信頼を揺るがすという意味で、不正を行っていたメーカーの責任は重大。今回明らかになった完成車の工場での検査は、道路運送車両法に基づき国土交通省に大量生産を認められた設計(「型式」)通りの数値に収まっているか、確認するもの。完成車の安全性は国が保証する建前だが、各メーカーの資格をもつ検査員が完成検査を代行することで車検場に持ち込む手間を省き、大量生産を可能にしている。メーカーがきちんと調べるとこを大前提にした、自動車の品質管理の根幹にかかわる制度なのだ。スズキの場合、2016年の不正の際、法令順守を誓ったのに、結局、製造現場に徹底されていなかったことになる。
この間の不正では、スバルの吉永泰之社長(当時)が6月の株主総会後に代表権と最高経営責任者(CEO)を返上した。今回の3社は、データの書き換えがあったスバルとは異なるが、そのあたりも勘案して経営責任について、いかなるけじめをつけるかも、今後の注目点だ。