ティファニーの指輪を左手薬指にはめて、轢死した彼女は「行旅死亡人」になった

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「なるべくご家族にお渡ししたいのですが...」

   「行旅死亡人」を担当するのは、市区町村の中でも福祉系の部署である。東京23区の場合、今回取材した範囲ではそれぞれ年間20~50人ほどの「行旅死亡人」(広義のものも含む)を取り扱っている。

   「死」に直接向き合う仕事は、当然楽なものではない。精神的な負担もある。世間の関心も小さい。ある職員は、「そもそも、自治体がこういうことをやっている、ということ自体、あまり知られていないので......」と漏らす。

   だが、今回話を聞いた担当者たちは、多くが真摯に死者に向き合っていた。

   できることなら、「行旅死亡人」という形で葬ることは避けてあげたい。なんとか身元がわからないか。手掛かりはみつからないか。

   とはいえ、そこには大きな壁がある。板橋区の担当者は語る。

「なるべくでしたら合葬にするよりも、ご家族にお渡ししたいのです。ですから、警察から引き渡された後、こちらでもできる限り戸籍などを調べて、遠い親族の方でもご連絡しています。ですが、すでに亡くなっていたり、あるいは疎遠だったりと、なかなか難しいのが実情です」

   ようやく身元を突き止め、親戚に連絡を取る。「××さんが亡くなられたので、遺体を引き取ってもらえないでしょうか」――だが、返ってくるのは「拒絶」の答えだ。

   「『絶縁しているので』、あるいは『自分も高齢・病気で、遠方に住んでいる。東京まで引き取りには行けない』。そうなると、区で扱うほかありません」

   辛さをにじませるのは、新宿区の担当者だ。

   「行旅死亡人」の多くは高齢者である。その近い親類も、高齢の場合が多い。特に地方在住だと、わざわざ上京してまで、何年も付き合いがなかった親類を引き取るというのは、負担が大きい。

   身元が明らかになっても、引き取り手がなければ、墓地埋葬法に基づいて、自治体の手で合葬されることとなる。結局は、広い意味での「行旅死亡人」となるわけだ。ある職員のつぶやきが耳に残った。

   「問題は身寄りが『見つからない』ことじゃないんです。『引き取ってくれる人がいない』ことなんですよ」

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