ティファニーの指輪を左手薬指にはめて、轢死した彼女は「行旅死亡人」になった

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赤文字で「死死死死死死」の落書き

   公告を頼りに河川敷を歩く。さすがに1年以上が経っていることもあり、それらしい痕跡はなかなか見つからない。そもそも、一角はきれいに遊歩道として整備されており、人が住めるようなテントの類自体、姿は見えない。

   探し回ること40分、橋の下に落書きを見かけた。赤い塗料で描かれたもので、「死死死死死死」「in」といった文字、そして矢印が橋下のスペースに向けて伸びている。

   矢印の向かう先に目を転じる。そのスペースは、柵で囲われていた。ホームレスの定住を防ぐためだろう。今は「住人」はいないようだ。しかし、そこにはボロボロの布団、そして朽ちた衣類が残されていた。

   地番からは少しずれる。だが、ここが男性の「終の棲家」だったのかもしれない。ひとまず手を合わせた。

   日本では今、5000人前後がホームレスとして暮らしている。厚生労働省が2017年9月発表した調査結果によれば、平均年齢は61.5歳。19.7%が70歳以上だ。健康に不安を抱える人は、27.1%に上る。

   ホームレスの多い荒川河川敷だが、この一角はサイクリングコースや遊歩道として整備が進む。きれいな舗装。立ち並ぶ柵。70歳近い男性は次第に肩身が狭くなっていただろう。現場で働くことも、だんだん難しくなる。人知れず持っていた「貯金」は、今後のための備えだったか。

   行旅死亡人の遺した金銭は、基本的にはその葬祭費用に充てられる。それでも余れば、家裁への申し立てを経て、国庫へと入る。

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