山口県周防大島町で行方不明になっていた藤本理稀(よしき)ちゃん(2)が無事発見され、捜索ボランティアとして理稀ちゃんを救出した男性が凄いと、ネット上で大きな話題になっている。
この男性は、大分県日出町在住の尾畠春夫さん(78)で、震災などでもその活動が注目された凄腕ボランティアだった。
東日本大震災では、遺品探しや復興願う徒歩の旅も
理稀ちゃんが曽祖父宅近くからいなくなって3日経った2018年8月15日の朝7時30分ごろ、「無事発見」のニュースが飛び込んできた。
テレビ朝日系「グッド!モーニング」は、その後、理稀ちゃんを抱いて山道を降りてくる男性の後ろ姿を映像で流した。理稀ちゃんは、顔に少しドロが付いているようだったが、目を開けているのが分かる。機動隊員らがこの男性の肩に手をやって誘導していたが、男性は、理稀ちゃんをしっかり抱えて離そうとしなかった。
番組では、「近所の男性」と紹介していたが、ネット上では、早くもこの男性が尾畠春夫さんだと騒ぎになっていた。赤いリュックサックに、「大分県日出町 尾畠春夫」と書かれたゼッケンが貼ってあるのが見えたからだ。
尾畠さんは、度々メディアで紹介され、ボランティアとしては有名人だった。
過去の報道を見ると、尾畠さんは、大分県内で鮮魚店を営んでいたが、65歳で辞めて、好きな登山を生かして山道の整備をしたり、体力を試そうと日本列島を歩いて縦断したりした。
同時に、被災地のボランティアにも取り組み、2011年の東日本大震災では、宮城県南三陸町で遺品探しなどの活動をし、その後、復興を願って本州一周徒歩の旅も敢行している。
2年前の捜索経験から、山の方にいるとひらめく
地元の日出町の広報2011年6月号では、尾畠春夫さんの活動が大きく紹介され、「今の自分があるのは周りの人のおかげ、困っている人がいれば手を差しのべるのはあたり前」とインタビューに答えていた。
その後も、精力的なボランティアは続き、車中泊をしながら様々な被災地で活動する姿が報じられている。2016年の熊本地震では、「嫌われてもいい」とボランティア12人を厳しく指導する様子が紹介されていた。
尾畠さんは、藤本理稀ちゃんの救出に成功した理由について、マスコミインタビューで2年前の経験を挙げている。
それは、大分県佐伯市内で2歳の女児が行方不明になったとき、別のボランティア男性が警察などの捜索区域外の山道を登って崖の下で無事発見したことだ。尾畠さんも捜索ボランティアに参加しており、そのときのことを覚えていたという。
尾畠さんは、「絶対この上にいるなと確信した」といい、8月15日朝に捜索を始めてわずか20分ほどで、曽祖父宅から北東に約560メートル山道に入ったところに理稀ちゃんを発見した。理稀ちゃんの家族には、見つけて直接手渡すと約束しており、警察の求めを断って自らの手で理稀ちゃんを家族に届けたという。
尾畠さんの活動ぶりに、ツイッター上などでは、「凄い、本当に凄い」「生き方すげーカッコ良いわ!」「映画のヒーローみたいだ」などと賞賛の声が相次いでいる。