39歳の日本人男性が北朝鮮を旅行中に拘束されたとされる問題で、その背景が少しずつ明らかになっていた。
男性が利用したとみられる旅行会社は中国・深センに拠点を置いており、欧米人向けのツアーを得意にしていた。この会社は、北朝鮮で拘束され、後に死亡した米国人大学生が利用もしていたとも報じられている。大学生死亡をきっかけに米国人による北朝鮮渡航が禁止になっており、そのあおりで欧州や日本向けのPRを強化していた矢先の出来事だった可能性もありそうだ。
日本テレビの報道では社名はなかったが...
日本テレビは2018年8月13日放送のニュース番組で、
「男性が利用したとみられる、中国広東省・深センの旅行会社」
を訪問する様子を放送。記者が雑居ビルとみられる一室のドアをノックしたが、
「中に人がいないのか、私たちの呼びかけに反応はなかった」
というナレーションが社名とみられる部分には「ぼかし」が入っていた。
韓国の通信社「ニューシース」は、男性が利用したとされる旅行会社について「日本テレビが報道した」としながらも、実際には日テレが伝えていない部分にも踏み込んで報じた。男性は、「北朝鮮に抑留されて昏睡状態になって帰国した後、死亡した米国人大学生のオットー・ワームビア氏の訪朝を手配していた旅行代理店」を通じて北朝鮮入りしたとみられると指摘。「ヤング・パイオニア・ツアーズ」(Young Pioneer Tours)という「中国に位置する北朝鮮専門旅行会社」だとも紹介した。
日テレが報じた旅行会社が「ヤング・パイオニア・ツアーズ」かどうかは必ずしも明らかではないが、同社のウェブサイトによると、本拠地は深センだとされている。
米国政府はワームビア氏の死亡をきっかけに、17年9月から自国民の北朝鮮渡航を禁止している。ニューシースによると、この影響で同社は
「米国人の北朝鮮観光斡旋を中止し、欧州および日本の北朝鮮観光斡旋と広報に力を注いできた」
という。同社のウェブサイトでは、現時点では9月に行われるマスゲームに合わせたツアーの参加者を募集している。値段は4泊5日で945ユーロ(約12万円)。こういった攻勢を背景に男性はツアーに参加し、何らかのトラブルに巻き込まれた可能性がある。
広報担当窓口は「おかけになった電話は電源が切れています」
「ヤング・パイオニア・ツアーズ」広報担当の電話窓口に取材を試みたものの、
「おかけになった電話は電源が切れています」
というアナウンスが英語と中国語で流れ、つながらない状態だ。
ニューシースは、男性の実名を挙げながら、
「映像クリエイターが最近観光目的で北朝鮮に入った後、南浦(ナムポ)市の軍事施設を撮影した疑いで逮捕されたことが分かった」
とも報じているが、18年8月14日17時時点で、北朝鮮の国営メディアは男性の拘束について報じていない。