大統領を精神的な親と見る米国民
2018年7月末、トランプ氏支持の傾向が強いとされるFOXニュースでも「トランプ不安障害」について取り上げた。そのなかで精神科医のダニエル・ボバー氏は、「これは正式な病名ではなく、症状が見られる人がそれほど多いわけではない。元々、何かしらの不安障害を抱えていた可能性があるのではないか」と指摘した。
さらに同ニュースの別の番組では、「そうした恐怖を浸透させているのは誰か」と投げかけ、「トランプの言動は米国を第三次世界大戦に導いている」、「大統領選の終焉は、まさにこの世の終焉だ」など、他局が流した反トランプ派の声を紹介した。
トランプ氏を支持するニュージャージー州在住のジェフ(50代)も、「フェイクニュースやネットで、ネガティブなニュースにしか触れていないからだ」と批判する。「国内総生産(GDP)は伸びたし、失業率は下がった。トランプの功績はまったく評価せず、悪いことはすべて彼のせいにする。結局、(反トランプ派は)負けを認められないだけだ」
オレゴン州ポートランド郊外に住む ジョイス(30代)は、大統領選挙戦の前から政治やトランプ氏について、セラピストに話すことが多くなったという。
「『いったい次は何?』と、気になり、夜中でも携帯でニュースを確認していたけれど、セラピストに言われてしばらくニュースを追うのをやめたら、前ほど不安を感じなくなった」と話す。
サイコセラピストのエリザベス・ラモット氏は、「自分はこの症状にあえて『トランプ』の名は使わないけれど、人格障害の親に育てられた人に見られる症状とよく似ている。自覚があるにせよないにせよ、私たちアメリカ人はこの国の大統領を、精神的な親として見る傾向がある」と話している。
(随時掲載)
++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。