米朝首脳会談以降は対米批判を控えてきた北朝鮮が、揺さぶりを本格化させている。
米財務省が制裁対象を拡大したことが原因だとみられ、このままでは非核化をはじめとする米朝会談の合意事項の履行は「いかなる進展も期待できない」とけん制している。
それでも、こういった動きはトランプ大統領の意思に「逆行して」行われていると主張しており、現段階ではトランプ氏を直接批判することを避けている。
「糾弾」の見出しは2か月半ぶり
北朝鮮は2018年7月末には朝鮮戦争(1950~53)で行方不明になった米兵の遺骨55柱を返還し、トランプ大統領は北朝鮮について「約束を守った」と、感謝のツイートをしたばかりだ。そんな状況でも北朝鮮は態度を硬化させている。朝鮮中央通信は18年9月9日、「対朝鮮制裁・圧迫を鼓吹する米国を糾弾」と題した記事を配信した。
北朝鮮外務省の報道官による声明を伝える内容で、朝鮮中央通信が米国について「糾弾」の見出しで批判を展開するのは、5月24日に米韓合同軍事演習を「糾弾」する声を伝える記事を配信して以来、約2か月半ぶり。
今回の声明では、北朝鮮側が遺骨送還など「大らかな措置を取った」ことが、米朝間の「不信の厚い障壁を崩して信頼を構築するのに寄与する」ことを期待していたが、米国は「国際的な対朝鮮制裁・圧迫を鼓吹することで応えた」と反発している。
これは、米財務省が8月3日、北朝鮮による違法な金融取引に関わったとしてロシアの銀行など3団体・1個人を制裁対象に加えたことを指しているとみられる。米朝会談後に制裁対象を追加するのは初めてだ。
トランプ大統領批判は回避
今回の声明は、8月6日に労働新聞が
「米国が『制裁・圧迫』という旧石器時代の石斧を捨てて、信頼と尊重の姿勢にどれほど近づくかによって未来の全てが決定されるであろう」
などと反発したのに続く反応で、
「米国が対話の相手に対する初歩的な礼儀も全て投げ捨てて、歴代行政府が体験した失敗の古びたシナリオに執着する限り、非核化を含む朝米首脳会談の共同声明の履行においていかなる進展も期待できない」
などと主張。非核化に向けた具体的な道筋が見えない中、制裁緩和などを要求する狙いがあるとみられる。
今回の声明で特徴的なのは、米国政府とトランプ氏を区別している点だ。今回の圧力強化は
「朝米首脳会談の共同声明履行のためのわれわれの善意の措置に謝意を表して朝米関係を進展させようとするトランプ大統領の意志に逆行して」
行われていると主張し、今後の展開についても、
「朝米両首脳の意を守って、朝米間に信頼を構築しながら朝米首脳会談の共同声明を段階的に誠実に履行していこうとするわれわれの意志には変わりがないし、米国は今からでもわれわれの誠意ある努力に相応した応答をすべきであろう」
と、トランプ氏への直接の批判を避けながら合意履行に向けた立場は維持している。