慎重派「睡眠不足がもたらす健康被害」
この睡眠不足は、いろいろな健康被害をもたらすというのは、様々な研究によって知られている。
推進側が経済効果、批判側が健康被害という主張で、経済より健康ではないかとの正論もあるが、議論はすれ違いだ。
しかし、睡眠不足が労働者の生産性を低め、経済的にマイナスという研究もある。2016年の非営利研究機関ランド・ヨーロップの研究によれば、7時間以内の睡眠で日本の経済活動はGDP3%の損失であるという。
サマータイムの推進側の経済効果が、せいぜい1兆円、つまりGDPの0.2%程度であるに対して、その1桁大きい損失だ。サマータイムのメリットとデメリットを比較すると、日本では日本人の睡眠不足もあり、推進側の分が悪い。
省エネではどうだろうか。サマータイムを導入しているのは欧米の高緯度国であり夏の日照時間が長く省エネ効果はあるだろう。しかし、アジアの中低緯度国ではその効果も限定的だ。
日本でも、戦後連合国軍の占領下で1948年から1951年まで4シーズン実施されていた。しかし、寝不足などで社会的に不評であったので、占領政策の終わりとともに廃止され、現在に至っている。
中緯度国の日本の周辺では、韓国、中国、台湾で過去にサマータイムを採用したことがあるが、現在では実施されておらず、サマータイムは定着していない。東南アジアでは、これまでサマータイムは実施されたこともない。
あと2年しかない中で、来2019年の元号改正もあり、システム対応は現実的に至難であることもあり、答えは見えているが、さて自民党はどういう結論をだすのか。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「『年金問題』は嘘ばかり」(PHP新書)、「大手新聞・テレビが報道できない『官僚』の真実」(SB新書)など。