秋以降の反動減に懸念
一方、猛暑で価格が高騰し、消費者が悲鳴をあげているのが野菜だ。都内のスーパーではキャベツやレタスが例年の1.5~2倍の1個200円程度にも高騰したといったニュースが流れる。農林水産省が7月25日発表した、16~18日の野菜の小売価格調査によると、キュウリが1キロ当たり791円(平年比約6割高)となった。高温や雨不足と東北など一部地域の天候不順(日商不足)などが複合してのことで、スーパーでは消費者が買い控えて売り上げが落ち込むところも出始めた。
猛暑は日本経済全体にどのような影響を与えるのか。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の景気循環研究所のリポート(7月3日)によると、東京・名古屋・大阪の3大都市の平均気温が6月下旬は平年より2度高く、この状態が8月まで続けば、2018年6~8月の個人消費は、平年並みの気温の場合と比べ6458億円増える可能性があり、実質消費支出を0.9%押し上げると試算している。
第一生命経済研究所の「マクロ経済分析レポート」(7月17日)も同様の試算を掲載。過去約20年分の7~9月期の国内総生産(GDP)と東京・大阪の平均気温の関係を分析したところ、気温が1度上がると、家計消費支出を0.5%(2884億円)押し上げる効果があり、2018年が観測史上最も暑かった10年と同程度の暑さになれば、家計消費支出が4900億円(0.9%)ほど増え、7~9月期のGDPの実質成長率を0.2%程度押し上げるとしている。
ただ、第一生命研の「レポート」は、秋以降の反動減には注意が必要だとも指摘している。猛暑の後の秋は、夏に金を使いすぎた反動で、財布のヒモを締める傾向があり、10~12月期の個人消費が失速し、成長率がマイナスになる可能性もあるという。
過去の猛暑の例で1994年と2010年は、それぞれ、7~9月期に家計消費が4.0%増と6.9%増、GDPが5.2%増と7.5%増だったが、10~12月期は家計消費がマイナス1.1%とマイナス6.7%、GDPがマイナス1.8%とマイナス2.9%と、絵に描いたような反動が出た。
同「レポート」は、さらに不気味な「警告」も発する。
「夏場の日照時間は翌春の花粉の飛散量を通じても経済に影響を及ぼす。前年夏の日照時間が増加して花粉の飛散量が増えれば、花粉症患者を中心に外出がしにくくなることから、今年の猛暑は逆に来春の個人消費を押し下げる可能性がある」
西日本を中心とした豪雨の被害によるマイナスも含め、「暑ければ景気が良くなる」と、単純に浮かれてもいられないようだ。