負け組に転落する中国の地方都市  高速鉄道誕生10年がもたらしたもの

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   中国初の高速鉄道、北京天津間鉄道が2008年8月1日に開通してから10年がたった。この10年の間に、中国の高速鉄道の総営業距離は2万5000キロにまで増加し、世界の高速鉄道総営業距離の3分の2を占めるまでになった。

   この高速鉄道建設ラッシュにより、中国の中・西部地域の経済情勢にも変化が生まれ、人口・物資・資金の流れは、ひっきりなしに武漢、鄭州、合肥、重慶、成都、西安、昆明などの中西部の中心都市へと集まった。しかし、この10年間をきちんと「清算」してみれば、高速鉄道建設ラッシュによる本当の受益者はその実、大都市・巨大都市であり、中小都市では逆に、産業と人材の流出という現象が顕著になっている。

  • 中国高速鉄道の車両「和諧号」。最高時速は350キロ(山東省の煙台駅で)
    中国高速鉄道の車両「和諧号」。最高時速は350キロ(山東省の煙台駅で)
  • 中国高速鉄道の車両「和諧号」。最高時速は350キロ(山東省の煙台駅で)

6割近い都市で人口が減るサイフォン現象

   著名な経済ライターである呉暁波氏は2018年7月14日、中国版のLINE、微信(WeChat)の個人公式アカウントで発表した文章で、高速鉄道の「サイフォン現象」について紹介している。

   このレポートでは、北京と上海を結ぶ「京滬(けいこ)高速鉄道」と上海、武漢、成都を結ぶ「滬漢蓉高速鉄道」の沿線36の中小都市に対する影響が研究されている。そのうち、京滬高速鉄道は北京・天津・上海という直轄市3市及び河北・山東・安徽・江蘇という4省を経ており、滬漢蓉高速鉄道は上海からスタートし、南京・合肥・武漢・重慶などの都市を経て、終点が成都となっている。

   それによると、高速鉄道は中小都市にとって人口集中を助ける役割を果たしてはおらず、58%の都市の人口が減少している。とくに、山東省の泰安、安徽省の滁州(じょしゅう)、江蘇省の昆山、湖北省の荊州、重慶市の豊都、湖北省の天門などは、人口の流出が最も深刻な都市である。

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