宅配最大手ヤマトホールディングス(HD)は2018年7月24日、子会社のヤマトホームコンビニエンス(YHC)が法人向け引っ越し業務の代金を過大請求していたと発表した。データの記録が残る16年5月から18年6月までに受注した3367社、約12万4000件のうち、2640社の約4万8000件で引っ越し代金を多く受け取っており、総額17億円にのぼるという。
これに対して、YHCの元支店長が7月27日に記者会見し、「過大請求は2010年ごろから全国で組織的に行なわれており、17億円ではすまない。詐欺罪に当たるのではないか」などとヤマト側を「告発」した。
ヤマト側は、見積もりそのものは正しく、精算を怠っていたと説明
7月24日のヤマト側の記者会見で、YHCの和田誠社長は「引っ越しされるお客様の都合で、当初の見積もりから家財量が増減したり、付帯作業が変化することが多く、事前に了解いただいた見積もり金額と実作業に差分が生じることがある」と説明した。例えば単身者の引っ越しで、見積もりでは冷蔵庫を運んでもらう予定だったが、実際には冷蔵庫を友人に譲ってしまったため、引っ越し当日は運んでもらわなかった――といったケースだ。ヤマト側は今回の過大請求について、基本的に見積もりそのものは正しく、精算を怠っていたと説明した。
ところが、YHCの四国地方の元支店長、槙本元氏(65)は7月27日の会見で「ヤマト側は記者会見で過大請求の額を小さく見せようとしている。引っ越し料金の見積もりそのものが過大に行なわれていた」などと述べた。槙本氏は2017年11月まで高知県の支店に在籍し、今回の問題を11年に内部告発した元支店長だ。内部告発したにもかかわらず、YHC内で意図的な過大請求は是正されなかったという。
槙本氏は、高知県の支店が全国の支店間で実際に荷物を運んだ伝票を公開。四畳半に住む単身者の引っ越しなのに、「ふとん袋が5つ、食堂テーブルの大が1つ、ダンボール箱の大が40個、小が50個」などと記されている実例を挙げ、「4畳半の中にこれだけの荷物が入るわけがない。実際に運んだのはダンボール箱20個分。明らかに意図的に料金を多く取ろうとしていた」と説明。「会社の見積もりは正しく、客の都合で荷物が減ったというヤマト側の説明は成り立たない」とした。
「請求すべきでない部分まで含まれている可能性はある」
槙本氏によると、YHCはライバルの大手引っ越し業者との競争が激しく、法人顧客には「大幅値引き」を条件に相見積もりを取らないよう要請し、YHCと契約した法人に対して過大請求を行なっていた。契約先企業の人事部や総務部など引っ越しの担当者は、社員の引っ越し荷物の数まで把握しておらず、社員にとっては、引っ越し代金は会社持ち。こうして会社、当事者とも、見積もり内容には無関心だった。YHCはこの「盲点」につけこみ、全国の支店で過大請求を繰り返してきた――という。
ヤマトHDの山内雅喜社長も、7月24日の会見で過大請求について「請求すべきでない部分まで含まれている可能性はある」と発言。意図的な水増し請求が行なわれていた可能性を示唆した。ヤマトHDは弁護士など外部の専門家で組織する調査委員会を設置し、8月中に詳細な調査結果や原因究明などの報告を受けるという。内部告発を行なった元支店長の詳細で有力な証言が明らかになった以上、ヤマトHDがYHCのウミを出し切れるか、注目される。