金属製の水筒にスポーツドリンクは「絶対NG」――。歴史的猛暑で熱中症対策の必要性が盛んに叫ばれるなか、インターネット上には、こんな注意喚起をするネットユーザーが相次いで現れている。
スポーツドリンクは酸性の液体のため、金属が溶け出して中毒を起こしてしまうというのだ。はたして、こうした情報は事実なのか。J-CASTニュースが、東京都福祉保健局、「ポカリスエット」の大塚製薬などに取材すると...。
過去には中毒事例もあるが...
「水筒が金属なら絶対スポドリ入れないでください!!」
「ポカリを金属水筒に入れちゃダメ」
「金属製の水筒に、スポーツドリンクを入れると、水筒内の金属が溶けて中毒になるらしい」
暑さが本格化し始めた2018年7月中旬頃から、ツイッターには上記のような書き込みが相次いで寄せられている。こうしたネットの反応を受けてか、ウェブメディア「しらべぇ」も21日朝、
「ステンレス製の水筒にスポーツドリンクは要注意! 中毒症状のおそれも」
と題した記事を配信。本文中では「酸性の強い飲料はステンレス製やアルミ製などの金属の水筒に入れることは注意が必要」と呼びかけていた。
こうした注意喚起の根拠とされているのは、東京都福祉保健局の健康安全研究センターが11年8月に公式サイト上に掲載した情報だ。確かにこのページでは、スポーツドリンクが酸性の飲料だと紹介しながら、
「酸性度の高い飲み物や食べ物を金属製の容器に入れると、飲み物・食べ物の中に金属が溶け出すことがあります」
と伝えていた。
また、実際の中毒事例も2008年に報告されているとも紹介。このときは、銅製の水筒で粉末のスポーツドリンクを溶かし、それを5~6時間後に飲んだ6人が、頭痛やめまい、吐き気などの症状を訴えたという。
金属が溶け出す恐れは「ほぼない」
やはり、金属製の水筒にスポーツドリンクを入れるのは危険なのか。J-CASTニュースが18年7月25日、上述の東京都健康安全研究センターの担当者に聞くと、
「基本的には、金属製の水筒であっても内部にコーティングが施されている製品がほとんどですので、スポーツドリンクを入れたからといって、金属が溶け出すことはほぼないと考えています」
と説明。実際、類似の中毒事例の報告は「近年はほとんどありません。おそらく、08年の事例が最後だと思われます」という。
ただ担当者は、「今は少なくなっているかと思いますが、銅製の水筒では注意が必要です。内部に傷がついていて、酸性の液体を長時間入れていると、中毒の恐れはあります」とも指摘。一方で、
「水筒の素材がアルミや鉄であれば、少量の金属が溶け出したとしても中毒を起こすことは考え辛いです。よっぽど大きな傷が内部についているのであれば、話は別ですが」
とも話していた。
このように、中毒のリスクは低いとしつつも、担当者は「水筒を使用する前に内部の状態をチェックしてください。サビや傷がある場合は、やはり使用を避けた方が無難だと思います」とも話していた。
大塚製薬、象印に聞くと...
大塚製薬(東京都千代田区)の広報担当者は、金属製の水筒にポカリスエットを入れて良いかどうかについて、
「ポカリスエットは塩分を含んだ酸性の液体です。長時間金属にふれていると、金属をサビさせたり、酸の影響で容器から金属が溶け出してポカリスエットの風味が低下したり、容器をいためてしまうことも考えられます」
として、「できれば避けて頂ければ」と回答。ただ、中毒の恐れがある点については言及しなかった。
また、水筒メーカーの象印マホービン(大阪市)の担当者は、「近年発売した弊社のステンレスマグは、すべて内部にフッ素加工を施しています」と説明。その上で、
「なかでも、フッ素加工を2倍にしたものを『スポーツドリンク対応』というカテゴリで販売しています。基本的には、使用後にすぐに洗って頂ければ、通常のフッ素加工製品にスポーツドリンクを入れることは問題ないと認識しています」
と話していた。
そのほか、タイガー魔法瓶(大阪府門真市)公式サイトのQ&Aページでも、ステンレスマグで「(スポーツドリンクは)ご使用いただけます」と明言。ただ、「ステンレスが腐食する可能性がありますので、使用後はすぐに お手入れをしてください」としていた。