朝鮮戦争(1950~53)で行方不明になった米兵の遺骨55柱が北朝鮮から返還され、2018年8月1日(現地時間)、韓国から米ハワイ州のヒッカム米軍基地に到着し、式典が行われた。
北朝鮮としては、6月の米朝首脳会談での合意事項のひとつを進めていることになるが、遺骨についていた「認識票」はひとつだけで、遺骨が「本物」かどうかを含めて身元の特定には時間がかかりそうだ。そんな中でもトランプ大統領は、遺骨返還について「約束を守った」と感謝をツイート。2回目の首脳会談に向けた意欲を見せた。
通常は骨や歯の状態、DNA、遺留品から身元を特定するが...
朝鮮戦争では約7700人の米兵が行方不明になり、遺骨約5500柱が今でも北朝鮮にあるとみられている。今回返還された55柱は国防総省の研究所が鑑定を行い、身元が判明次第遺族に返還する考えだ。
ただ、それまでは様々なハードルがありそうだ。研究所では、通常は骨や歯の状態、DNA、制服や認識票(ドッグタグ)、結婚指輪といった遺留物から身元の特定を進める。
ところが、AP通信が米国防総省の高官の話として伝えたところによると、返還された55柱のうち、認識票がついていたのは1柱だけ。その唯一の認識票も、何かが書かれているかどうか不明な状態で、身元の完全な特定には「数年とまではいかないが、数か月はかかる」という。
マティス国防相「遺骨が米国人のものだという保証にはならない」
マティス国防相も
「55柱の返還は前向きなステップだが、遺骨が米国人のものだという保証にはならない」
と述べたといい、遺骨が「本物」かどうか懐疑的だ。火葬と土葬の違いはあるものの、過去に北朝鮮が日本に提供した遺骨が「偽物」だとされた経緯を念頭に置いている可能性もありそうだ。
日本政府は04年11月、1977年に拉致された横田めぐみさん(当時13)の遺骨とされるものを北朝鮮から持ち帰り、帝京大法医学研究室、警察庁科学警察研究所、東京歯科大の3機関に鑑定を依頼。科捜研と東京歯科大は、遺骨が高温で焼かれていることを理由に鑑定不能だと判断したが、帝京大の鑑定では、横田さん以外の2人のDNAを検出。これを根拠に日本政府は遺骨が「横田めぐみさんのものではないという結論が出た」と断定したが、帝京大で鑑定を担当した吉井富夫氏は、05年2月に英ネイチャー誌のインタビューに応じ
「鑑定は決定的(最終的)なものではなく、サンプルが汚染されている可能性がある」
ことを認めている。このことから、遺骨が「偽物」だとする日本政府の結論の妥当性を疑問視する向きもある。
そんな中でもトランプ氏は8月2日午後(日本時間)、遺骨返還について金正恩委員長に「約束を守ったことを感謝する」とツイート。
「あなたがこの種の行動を起こしたことにはまったく驚かない。さらに、素晴らしい親書にも感謝したい。近くお目にかかれることを楽しみしている」
とも書きこみ、親書のやり取りなど、2回目の首脳会談に向けた調整が進んでいることを匂わせた。