非鉄金属の代表的な銘柄である住友金属鉱山株が軟調な展開となっており、2018年7月後半には連日で年初来安値を更新した。米中貿易摩擦の懸念から銅やニッケルの価格が下がっているためだ。電気自動車(EV)向け電池材料事業など成長を見込める分野が育ってきているが、主力の資源事業が期待通りの収益を得られるか、危ぶむ見方が広がっている。
住友金属鉱山と言えば、兜町かいわいでは「別子(べっし)」という「通称」で呼ばれることもある有力銘柄だ。別子とは愛媛県新居浜市の別子銅山を指し、住友グループの祖業とも言える銅の産出を担った。別子銅山は1973年に閉山しているが、江戸時代以来の住友グループの興隆を支えた象徴的な銅山だ。「住友金属鉱山」が社名となるのは1952年。その前身の時代から営々と別子銅山の運営や銅の精錬に携わり、今も世界で銅生産を手がける住友金属鉱山は、住友グループの中核的な企業という位置づけだ。
中国は世界最大の銅消費国
現在の住友金属鉱山の事業は「資源」「精錬」「材料」の3分野。資源は世界各地の鉱山から銅などを産出▽精錬は文字通りそれら非鉄金属を精錬▽材料はスマートフォンの部材やEV向け電池の材料などを生産――という具合だ。社内では工程の流れから上流、中流、下流と言われることもある。2018年3月期の利益でみると資源が全体の46%、精錬が42%、材料が12%を稼ぐ。資源事業が稼ぎ頭である以上、資源価格の動向が経営に与える影響は大きい。もちろん精錬事業や材料事業も資源価格と無縁ではない。
米中貿易摩擦は世界経済の不安材料になっており、世界経済なかでも中国経済の減速への懸念が強まっている。中国は世界最大の銅消費国であり、その需要減退を見越した価格下落が起きやすい局面だ。実際、7月19日のロンドン市場では国際指標である銅の3か月先物が約1年ぶりの安値をつけた。
連日で年初来安値を更新
これを受けて20日の東京株式市場で住友金属鉱山株が一時、前日終値比3.8%(149円)安の3790円をつけ、年初来安値を更新した。翌営業日の23日は一時、3761円にまで下げて連日の年初来安値更新となった。その後はやや持ち直しているが4000円を少し上回る程度で、年初来高値(5562円、1月11日)は遥かに遠い。
米中貿易摩擦がどのような経緯をたどり、それが中国経済にどのような影響を与えるのかがなかなか見定めにくいだけに、上昇反転のきっかけをつかみにくいのが実情だ。EV電池の材料は成長が約束されているような事業なので株の買い材料ではあるのだが、中国経済の不安を打ち崩すほどでもないようだ。