広辞苑第7版では、「積読(積ん読)」をこう解説する。
「(『つんでおく』とドク(読)とをかけた洒落)書物を読まずに積んでおくこと」
買ったがいいが、読む時間がない――ついつい増える本に悩んでいるのは、日本人だけではないようだ。ここ数年、「Tsundoku」という言葉の海外輸出が進んでいる。とうとう、英BBCまでもが大きく取り上げた。
明治時代にはすでに悩みの種
「Tsundoku:本を買い、それを決して読まないということ」――英BBCがこんなタイトルの記事を、ウェブ上で公開したのは2018年7月29日(現地時間)のことだ。
「積読」という言葉の起源は、意外に古い。遅くとも明治時代には、愛書家の間で使われていたとされる。今でも本棚、あるいはKindleのアプリが、気が付くと積読だらけになってしまう人は多いだろう。
BBCの記事ではこうした「積読」の意味や由来を詳しく紹介、ネット上での「Tsundoku」の用例を複数取り上げつつ、「あなたも知らず知らずのうちに、Tsundokuをしているかもしれない」と問いかける。
その上で、英語の「Bibliomania(ビブリオマニア=蔵書狂)」との違いを、皮肉っぽく解説する。
「コレクションを作ろう、という意思があるのがビブリオマニア。本を読もうとして、結果的にコレクションを作ってしまうのがTsundoku」
耳が痛い人もいるだろう。
英語には対応する言葉がない?
「Googleトレンド」によると、英語圏では2012年ごろから「Tsundoku」というキーワードの検索回数が、じわじわ増えている。ウィキペディアでは2014年に英語版で項目が立てられ、現在ではフランス語、スペイン語、アラビア語など8言語版に掲載中だ。アメリカのオンライン俗語辞書「アーバン・ディクショナリー」にも収録されるなど、着実に市民権を得つつある。
それにしても、積読=Tsundokuはなぜ、海外に広まったのだろうか。
「オックスフォード英語辞典」の公式ブログ(2015年)には、こんな記載がある。
「Tsundokuは日本語で、直接のシノニム(同意語)を英語に持たない」
要するに「書物を読まずに積んでおく」という状態を指す、直接的な表現が、英語などにはないのだ。「津波(Tsunami)」や「過労死(Karoshi)」など、過去に英語に取り入れられた日本語も、こうしたパターンである。
もう一つ大きいのは、誰もが「あるある」とうなずいてしまう事象だからだろう。今回のBBC記事への反響をみると、海外ユーザーからのこんな声が相次いでいる。
「まさしく自分のことだ(涙)」
「悲しいかな、私もTsundokuです」
「この現象って名前あったのか!」
愛書家の悩みは、洋の東西を問わないようだ。