岡田光世 「トランプのアメリカ」で暮らす人たち 難民を支援する大統領支持者のジレンマ

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ベイルートの難民キャンプに入った金融エリート

   レバノンでの活動の様子を聞きたいと思い、2018年7月28日にディーンと電話で話した。

「僕はこれまで、シリア難民のニュースをそれほど気に留めていたわけでもなかった。でも、地べたにすわって彼らと直接、話し、彼らの生活を垣間見たことは、人生が変わるほどの経験だったよ」

彼は開口一番、そう言った。

「ベッカー高原(レバノン山脈とアンチレバノン山脈との間に広がる高原)の難民キャンプには、130世帯くらいの家族が住んでいた。暑くて埃だらけで、悪臭という劣悪な環境で、もう4年以上もそこで暮らしている人たちもいた。学校にいる90人くらいの子供たちは、その多くが孤児だった。親戚を戦闘で亡くした子もたくさんいる。それなのに、みんなとても明るく、喜びに満ちた顔をしているんだ。
ある女性が、自分の孫の写真を見せてくれた。16歳くらいだと思う。話を聞いてみると、孫はその女性の目の前で、過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員に首をはねられたというんだ。
彼らは自分たちが生きていくことで精一杯なはずなのに、僕たちのためにお茶を入れて歓迎してくれた。僕たちとまったく変わらない、同じ人間なんだ。僕が彼らであっても、おかしくはない。それなのに、僕にはイリノイ州に冷房の効いた家があり、家族が待っている。いたたまれなかったよ。今では何かを買おうとするたびに思うんだ。このお金は、あのシリアの人たちのために取っておこうって」

   この団体のフタッフのほとんどは、現地に住むレバノン人だという。

「スタッフのなかには、ヒズボラ(1982年のイスラエルによるレバノン侵攻を受けて結成され、今もレバノンで活動するシーア派イスラム原理主義の政治・武装組織)の戦闘員だった人もいる。キリスト教に改宗して、リーダーのひとりとして活躍しているんだ」

   レバノンは今、150万人のシリア難民を抱えている。その割合は、レバノンの全人口の4分の1を占める。レバノンがシリアに侵攻され、実質的支配下に置かれていた時期もあることや、難民流入が限界に達していることから、レバノン国内ではシリア難民支援に対する批判の声も強い。そんな状況で献身的に働くスタッフを見て、キリスト教に関心を持つ難民も少なくない。

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