精神病患者の身体拘束、どこまで許されるか 死亡したNZ青年「拘束を外してほしい」と要望していた

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   とりわけ精神病院で多い患者の身体拘束を主題にしたシンポジウムが2018年 7月22日東京で開かれた。主催する医療事故被害者らの「医療の良心を守る市民の会」 (永井裕之代表) が初めて精神病問題を取り上げた。

  • 精神病院での拘束問題、どうすべきか
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医者「自殺した場合には家族から追及される」

   講師の 1人は、長谷川利夫・杏林大学保健学部教授。神奈川県内の精神病院で10日間の身体拘束をされていたニュージーランドの青年が17年 5月死亡した事件をきっかけに「精神科医療の身体拘束を考える会」を立ち上げた。

   長谷川教授はまず自身の拘束体験から拘束の方法や種類を紹介、体がほとんど動かせない状態では何も考えられなくなることを強調した。拘束は法律(精神保健福祉法)では自殺、自傷行為の切迫などごく限られた条件下で認められているが、実際には安易に行われ、しかも年々増えている。

   看護記録によると、ニュージーランド青年は看護師と穏やかに会話し、何度も拘束を外してほしいと要望していた一方、「精神運動興奮状態にあり、放置すれば患者が受傷する恐れあり」などの弁解的な文章が書かれていた。長谷川教授は身体拘束の多くは人権侵害であり、実施過程の可視化など外部のチェックが必要と強調した。

   続いて三枝恵真弁護士が身体拘束の法的根拠や基準、危険性を解説した。拘束の違法を訴えた訴訟は少ないが、違法、適法の判決ともある。拘束時の患者の言動を確認するのは困難なため、指定医の判断が追認されやすい。危険な実例として三枝弁護士は、入院から 8日間拘束されていた54歳女性が16年 1月、肺血栓そくせん症で死亡したケースを紹介した。必要性のない拘束でそくせん症の予防措置もされておらず、遺族は 7月に損害賠償請求訴訟を提起した。

   会場からの指定発言として木下正一郎・医療問題弁護団事務局長は「精神科医療における身体拘束に関する意見書」を弁護団ホームページで公開したことを報告した。拘束は原則として違法で、あくまで例外的な場合に許容されるもの、との明確な意見だ。

   精神病院からは岩下覚・桜ケ丘記念病院 (東京都) 院長も講師として加わり、自院の入院や拘束の実態を公表した。岩下医師は拘束の問題点、減らすべきとは認めたものの「拘束しないでいて、患者が転倒したり、自殺した場合には家族から追及される」との悩みも吐露した。 (医療ジャーナリスト・田辺功)

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