金融庁長官人事、すでに「ポスト遠藤」の争いが始まっている

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

森氏に吹いた二つの逆風

   だが、前後して、森氏に二つの逆風が吹いた。一つが、1月末に発覚したコインチェックによる仮想通貨の巨額流出事件。ずさんな管理で580億円にものぼる仮想通貨が盗み取られ、結局、犯人は捕まっていない。世界を相手にした次世代の金融戦争をにらみ、仮想通貨取引の育成に大きく踏み込んだ森長官だったが、「登録制」という緩い規制で仮想通貨交換業者を育てようとしたのが裏目に出て、杜撰な業者の存在を許すことになり、事件を招いたとして批判を浴びた。

   もうひとつがスルガ銀行(本店・静岡県沼津市)の不祥事だ。シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する不動産会社、スマートデイズが経営破たんしたが、その仕組みにスルガ銀が深く関わっていた。オーナーが融資を受けて物件を購入し、スマート社が家賃を保証し、その収入で融資を返済するスキームだが、入居者を十分に集められないスマート社が破綻し、融資を返済できなくなるオーナーが続出して社会問題化している。この融資が、スルガ銀のほぼ丸抱えで、しかも融資審査の書類の改ざんなどが発覚している。

   こんなスルガ銀だが、少し前まで、新たなビジネスモデル作りに取り組む「地銀の優等生」として森長官がほめちぎっていた。静岡銀行という地域の巨大地銀を相手に、中小企業向けの融資中心では太刀打ちできないと見切り、住宅ローンなど個人向け金融に経営資源を集中し、成果を上げていたのだ。その陰で、ノルマ営業が現場を追い込み、無理な融資に走らせたのが「かぼちゃの馬車」問題だとされる。その躓きは、森氏にも大きなマイナスになった。

   こうして、官邸にも冷ややかな声が増えていったという。いずれにせよ、退任となれば、注目は後継人事に移った。強力なリーダーシップで引っ張るタイプの森氏は、調整型の遠藤氏とそりが合わなかったといい、森氏の「意中の人」は遠藤氏の1期下の氷見野良三・金融国際審議官(58)=1983年入省=というのが衆目の一致するところだった。6月初旬でも有力経済誌が「氷見野氏当確」などと書き、遠藤氏には「日銀理事」の「辞令」もささやかれたほど。

   一方、別の有力経済紙は3月に「遠藤長官説浮上」との情報を掲載しているが、これは「森財務次官」が前提。いずれにせよ、春先から情勢が流動化していたことがうかがえる。そして、最終的には「氷見野長官は官邸に蹴られた」(大手紙経済部デスク)とされ、「森氏は遠藤氏の同期で総務企画局長だった池田唯一氏の長官昇格を図ったようだ」(霞が関関係者)との情報もある。いずれにせよ、最終的に、遠藤氏の昇格に落ち着き、池田氏は退任した。

   ただ、これによって森氏が傷心のうちに去ったと見るのは早計だ。氷見野氏は審議官に留任。またその同期の三井秀範氏(59)が検査局長から企画市場局長に、やはり同期の佐々木清隆氏(57)が総括審議官から総合政策局長に就くなど、「いずれも森氏のお気に入りが枢要ポストを占めた」(大手紙デスク)。遠藤氏に関しては「ワンポイントリリーフ」(同)との見方も強い。1年後に向け、氷見野、三井、佐々木の3氏によるポスト遠藤の争いは、すでに号砲が鳴っている。

1 2
姉妹サイト