紙とネット情報の質・量が逆転しつつある
ここ数年感じるのは「逆転現象」である。印刷物の情報とネットの情報の質と量の逆転である。
印刷物からのコンテンツ流用で始まったネットニュース、もっと範囲を広げてネット情報まで考えると、回線の大容量化や表示技術、表現の進歩で逆転現象が始まっている。発信される情報は、印刷物よりネットのほうが多くなってきた。多くの雑誌が休刊し、新聞は部数を減らした。多種多様な情報誌が印刷からネット配信に置き換えられた。
ネット情報の質的な変化も感じる。様々なジャンルの情報がネットに配信され、画面デザインは豊かになった。ネットブラウザでの表現は格段に向上した。
メディアウォッチからスタートしたJ-CASTニュースも質的変化に対応している。表紙画面で紹介している記事のほかに、毎日数十本の企画記事を配信している。テレビウォッチコーナーの「元木昌彦の深読み週刊誌」は日本の風俗史である。週刊誌こそ世間の感覚、井戸端の感覚に近いゲリラメディアであり、その記録は後世、日本を知るときには欠かせない情報である。10周年を迎える。
「テレビ見朱欄」も10周年である。2人のテレビ批評家が辛口で番組を批評、ときにはほめるので人気である。先日、1500回を越した。
スタートから6周年を迎える連載「霞ケ関官僚が読む本」は日本を支えていく霞が関の官僚たちがどのような興味を持ち、何を考えているかを知る手引きでもある。彼らは、日本にとって何が必要と感じているのか、取り上げる書籍とそれを読む視点から窺える。
「岡田光世トランプのアメリカで暮らす人たち」はトランプ大統領就任からスタート、支持者がどういう人たちかに焦点を当てた連載ルポ。ほかにも、会社ウォッチ、トレンドウォッチコーナーで多くの連載を配信している。
Q&A記事と勝手に称しているのだが、読者の興味を推測し、仮説を立てて記事企画を立てる方法である。ネットにはユーザーの質問に答えるQ&Aサイトがいくつかある。質問者は読者である。Q&A記事は、編集部が読者に代わって読者の疑問、興味を考える。記者がストーリーを考えて取材して記事にする。ネットにはこの種の記事が多くなってきた。元々は雑誌得意の企画手法であり、ネットもいよいよ雑誌手法のニュースがのしてくるのではないかと思う。
メディアの進化は、先行メディアの模倣から始まると言われる。しかし、ある時点からは既存メディアにないセンス、手法を身につけなければならない。新聞ニュースの朗読から始まったテレビのニュース番組はニュースをショーとするスタイルを生み出した。その是非は議論があるところだが、J-CASTニュースもいずれは新しいニューススタイルを創造したい。毎年、入社してくる新卒記者、編集者、営業企画者がそれを目指している。
J-CASTニュース発行人 蜷川真夫