編集長からの手紙 
ネットニュースは進化したのか、退化したのか

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   ネットニュースはこの10年でどこが変わったのか。2018年7月26日、J-CASTニュースが12周年を迎えた機会に、編集部の視点で振り返ってみた。

   12年前、J-CASTニュースがスタートしたころ、ネット上のニュースと言えば一般の新聞、スポーツ紙の記事を転載したものがほとんどだった。つまり、ネットニュースは新聞のニュースと同じ、新聞記事のネット版だった。

既成メディアも変わった

   J-CASTニュースは新聞を補完するメディアとしてスタートした。新聞のニュースがあることを前提に、別の視点、好奇心の範囲を広げることで独自のスタイルニュースを配信しようと試みた。当時、独立系のニュースメディアはほとんどなく、似たようなメディアとしては日刊現代があった。印刷記事の流用ではあるが、一般の新聞と違う視点で書かれた雑誌スタイルの記事である。

   ニュースメディアではないが、独自の視点で情報を発信しているメディアにはブログがあった。徳島新聞社出身、藤代裕之氏の「ガ島通信」、政治性の強い記事もある「きっこの日記」、やまもといちろう氏の「切込隊長」など、彼らこそネットニュースの先人、先陣だったと思う。既存メディアにないゲリラ性を備えていた。週刊誌にもゲリラ性があるが、当時は週刊誌の記事がネットに転載されることはなかった。ブログのゲリラ性は光っていた。

   新聞社、通信社は記者クラブに記者を配置し、手厚く取材をして記事を書く。それだけの経費をかけられるビジネスモデルが確立していた。揺らぎ始めてはいるが、まだまだ、取材にかける手間はネットメディアの比ではない。

   数人でスタートしたJ-CASTニュースは取材に十分な手間と費用をかけることが出来なかった。次善の方策として、メディアウォッチのスタイルを編集に取り入れた。新聞、テレビ、雑誌の情報をウォッチしながら独自の視点で記事を作る。この方式で、ある程度のニュースの広がりを提供できる。既成メディア以外に、ネットの情報をウォッチする、ネットをネタ元にする、これが当時としては新鮮だった。

   不確定、いい加減な情報を扱うとはメディアの風上におけないという批判、非難を受けた。もちろん、ネット情報なら何でも載せたわけではなく、出来るだけ確認する。ネットネタの記事に、いわゆる「炎上もの」があった。J-CASTは炎上メディアだという揶揄もあったが、これはネットにおける一つの典型的、象徴的な現象で、ネット空間には既成メディアが見過ごした多くの隠れた情報が発信されている。いまでは、新聞、テレビにもネットの炎上ネタ、過激ネタ、奇妙ネタが面白ニュースとして扱われている。何百万回視聴されたという動画はテレビで毎日紹介されている。これは、既成メディアが進化したことになるのか、退化したことになるのか。

   朝のワイドショーを紹介、コメントする「ワイドショー通信簿」は創刊当時からの人気コーナーである。朝のワイドショーは、新聞に掲載されたニュースを紹介しながらコメントしていく形式が基本になっている。ならば、それに更にコメントを付けて記事化できないかと考えた。ベテランの執筆者に番組をウォッチしてもらい、それぞれの視点で短く紹介する。ランチ休みにネットで楽しんでもらうという趣向である。ワイドショーは新聞とは違う目線でニュースを選択しており、この目線はネットに近いと感じた。新聞より好奇心の範囲は広く、分かり易く砕いてある。新聞のニュースという基本情報が提供されている社会で成り立つ企画である。

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