富山県の小さな会社が作るアウトドア用ヘッドライトに、注文が殺到している。1日40個ほどの売り上げだったのが、ある日からの2日間で1800個に激増した。
きっかけは、購入者によるツイッターへの投稿だ。商品とともに添えられていた2枚つづりの「手紙」の内容が反響を呼んでいる。
「じぶんたちの子供のように時間をかけてじっくりと」
ツイッターユーザーの「さほ触手」(@sahotex)さんは2018年7月23日、通販サイトでアウトドア用のヘッドライトを購入したところ、「商品の箱の中から涙ぐましい手紙が出てきた ......またここのライトを買おう......」と、その手紙の写真を投稿した。
購入したのは、トモスメイカー合同会社(富山市)の「Tomo Light(トモライト)」。手紙は同社の松田大輔代表の名義で書かれている。
「このヘッドライトはわたしたちが海外の工場と直接やりとりして、開発に6か月以上かかった大切な商品です。他社にはない明るいライトをたくさんつけて、中のバッテリーも安価で良いものを取りそろえて、海外と日本でダブル検品して、何週間もかけて船で日本に送ってもらった本当に本当に大切な商品です」
簡単な会社紹介や、自慢の製品であることも記載している。
「うちの会社は家族4名でやっている元々、小さな富山のメーカーですが、いつも開発品はじぶんたちの子供のように時間をかけてじっくりと他社に負けないように開発しているつもりです」
アフターサービスについても、「動作は確認しているので使用上は全く、問題ないつもりですが、何かあれば遠慮なくご連絡ください。誠意対応していくつもりです!」と約束。説明書記載の保証期間は「3か月」ながら、
「商品を買ってくださったのですから半永久的にサポートするつもりですので 何かありましたら、遠慮なくご連絡ください(笑)」
と気軽な連絡を呼びかけている。最後は「それでは、お客様によりよい人生ライフを!」。こうした文章が約1000字にわたり2枚つづりで書かれていた。
松田代表「私たちの心構えを少しでも伝えたい」
投稿は26日昼までに3万2000リツイート、7万3000いいね、がつくなど反響。手紙の文面ににじむ、商品にかける熱い思いや、購入者をホッとさせるような人間味ある親身な姿勢に、好感が持たれているようだ。投稿には、
「こういった経営者様には今後も応援したくなりますし、頑張って欲しいですね!」
「職人と話してるみたいでまるでオーダーメイドのようなワクワク感」
「ところどころ、平仮名なのがまた良い」
といったリプライが相次いだ。
投稿者が「2000円ちょいで買える」「先ほど使わせていただいたのですが、充電方法、充電池の容量、光量どれをとってもピカイチでこの値段で本当にいいのか?と思える素晴らしいライトでした!」とレビューしたのも相まって、「欲しくなってきた」という声も多い。実際に販売数も増え、通販サイト・アマゾンの「ヘッドライト」カテゴリー売れ筋ランキングをみると、「トモライト」は26日時点で1位だ。
トモスメイカーは富山市八尾町に構える家族経営の小さな会社。ヘッドライト以外にも自転車のテールライトや、自動車関連アクセサリーなどを扱っており、アジア・欧米の工場と商品開発したり、取引先から輸入販売したりしている。法人化したのは17年だが、もともと松田大輔代表の個人事業として6年ほど続けていた。
松田代表は25日、J-CASTニュースの取材に応じた。今回話題を集めた「手紙」は、「検品時に商品に添え状としてつけているので、ヘッドライトを買われたお客様すべてに届くよう手配されています」という。添付するようになったきっかけは、松田代表自身の体験だ。
ネットショップで買い物をした時、その店主から「お買い上げありがとうございます」といった手紙が添えられていた。「もう内容もほとんど覚えていないですが、『手紙をもらった』という事実だけは(記憶に)残っていました。言うならば、それがきっかけかもしれません。商品で感動させるだけじゃなくて、他のものでも一歩先に進めて、お客様を感動させる」と強く印象に残っている。
「トモライト」という商品名も、「お客様と『友』達になって、お客様と『共』に歩んでいけるようなライト製品」という願いを込めた。手紙を添えるということにも、その理念は通じている。
「一緒に感動して、一緒に喜んでもらって、一緒に幸せになってもらって、一緒に笑っていただけるような、そういう心構えでいたいので、手紙を商品につけて、私たちの心構えを少しでも伝えたいという気持ちも強いです。手紙は単なるサービスだけじゃなくて、弊社の本気具合や想い、そういうのも込めて、今のようなサービスにしている形です」
「『今まで誠意を込めてやった成果だよ』と言われましたが...」
トモライトの特徴は「明るさ重視、短時間使用。コスパ最高」。夜釣り用に明度の高いものがほしい、というカスタマーのリクエストに応えて開発したLEDライトで、登山やサイクリングなど用途は幅広い。照射距離は500メートルで輝度・範囲を調整でき、生活防水仕様。USB充電式のリチウムバッテリーで稼働し、約5時間の充電で2.5~5.5時間使える。
その明るさと携帯性などから「防災用品」としても利用できる。大阪府北部で6月に起きた震度6弱の地震や、今なお避難者が多い7月の西日本豪雨災害などでも活躍した。松田代表は、
「震災にあわれたお客様方から『手紙、勇気づけられました!』『すごくうれしいです!』というようなコメントをいただいたりして、『反対に勇気づけられたのはこちらです』と内心いつも思っていたり、商品もそうですが、手紙も合わせることで、より人を勇気づけられると気づいてから、ますますやめられなくなってしまった形ですね」
と話す。
同商品はこれまで1日40個程度の売り上げだったが、ツイッターに投稿されてから取材までの約2日間で1800個に急増。若干落ち着いたものの1~2分に1個のペースで売れているといい、在庫が追いつかない。
「仲間内からは『今まで誠意を込めてやった成果だよ』とあちらこちらから言われましたが、お客様に商品を随時お届けできないのはメーカーとしての恥だと思っているので、生産体制を整え、早めに通常稼働したいですね。ツイートしてくださったみなさんにはとても感謝しています。お礼のメッセージもたくさん届いて、うれしい限りです」
「一番うれしかった」のは、「『私もTomo Lightさんの商品買いました。とてもいいですよね!』というような、前々から買っていただいていた方のコメントが非常に多くて『みんな喜んでくれているのか、よかったな』と強く思えたことです」という。最後まで、商品を手に取る人の喜びを願っていた。