ホンダは2018年7月13日、軽乗用車の商用車「N-VAN(エヌバン)」を発売した。ホンダにとって、軽の商用バンとしては19年ぶりの新型車となる。
いまだ衰えない軽乗用車「N-BOX(エヌ・ボックス)」人気と、インターネット通販の普及に伴う宅配車需要の拡大という二つの「追い風」に支えられ、「エヌバン旋風」を巻き起こせるか、注目される。
「Nシリーズ」人気
エヌ・ボックスのプラットフォーム(車台)を最大限活用し、広い積載スペースを確保。具体的には、燃料タンクを前席の下に収めることで荷室を低床化したほか、前後のドアの間の柱をなくすことで助手席側に大きな開口部を設定し、荷物の積載作業を効率よく行うことを可能にした。長時間移動でも快適な乗り心地と、1リットルあたり17.6~23.8キロというクラストップレベルの低燃費を実現。さらには、衝突軽減ブレーキや誤発進抑制機能などを備えた安全運転支援システム「Honda SENSING(ホンダ センシング)」を標準装備するなど、最新技術を惜しみなく投入した。
月間販売目標は3000台。全国軽自動車協会連合会によると、前モデル「アクティバン」の販売台数は2018年6月に280台だったから、一気に10倍以上になる計算だ。スズキ「エブリイ」(8761台)、ダイハツ工業「ハイゼットカーゴ」(6563台)という「2強」の35~45%程度に当たる。
勝算はある。「Nシリーズ」人気だ。2011年12月に第1弾の「エヌ・ボックス」を発売して以降、市場を席巻。17年9月に初めてエヌ・ボックスのフルモデルチェンジを実施した効果もあり、17年(通年)の新車販売台数は唯一20万台を超え首位だった。2位のプリウス(トヨタ自動車)を5万台以上引き離している。18年1~6月も12万台を超え、スペーシア(スズキ)、ムーヴ(ダイハツ)、ノート(日産)などに大差を付けた。「Nシリーズ」累計でも18年6月末時点で200万台を超えた。「エヌバン」も「エヌ・ボックス」の派生商品という位置づけだから、好調な販売が期待できる。
価格は、ライバルメーカーに比べると「かなり割高」だが...
宅配車需要の拡大も追い風だ。特に軽バンは小回りがきき、女性でも運転がしやすいため、堅調な需要が続くとみられている。燃費が良く、荷物がたくさん積めて、出し入れがしやすいなど、利点はたくさんある。
荷物の宅配以外の用途も考えられる。例えば、キッチンカー、移動販売などにも応用可能だ。上位クラスには、力強い加速のターボ仕様を用意したほか、ピンクやブルー、イエローといった外装もそろえた。簡易的なキャンピングカーや、サーフボードなどを積む「趣味の車」としても活躍しそうだ。従来の商用バンの概念が、がらりと変わるのかもしれない。
価格は消費税込みで126万円台~179万円台。ライバルメーカーに比べるとかなり割高だ。値段以上の価値を購入希望者がどの程度感じられるのかが、ポイントとなる。