サッカーJ1リーグの試合中、脳震盪で倒れた柏レイソルGK中村航輔(23)のもとへ真っ先に駆け寄ったのは、「相手チーム」FC東京のMF高萩洋次郎(31)だった。
FC東京が先制を決めた場面だったが、高萩は喜びを表す前に容体を案じた。敵味方の関係抜きにした行動に、「人間性の良さが染み渡った」「救われます」といった声がインターネット上でも相次いだ。
FC東京選手の膝が頭部に激突
J1第16節・柏対FC東京戦(0-1)は2018年7月18日に開催。ロシア・ワールドカップ(W杯)の中断期間明け最初のこの試合で、W杯帰りの中村の身に心配なことが起きた。
0-0で迎えた後半16分、FC東京のMF東慶悟(27)が右サイドからクロスを上げると、クリアしようとスライディングで足に当てた柏DFパク・ジョンス(24)のボールがネットに吸い込まれ、オウンゴール。FC東京が先制した。
だがこの時、ゴール前に飛び込んでいたFW富樫敬真(24)の膝が、クロスに対応しようと横っ飛びした中村の頭に激突。仰向けに倒れ込んで動けなくなった。
得点に沸き立つスタジアムの中で、すぐさま中村に駆け寄ったのがFC東京の高萩だった。ペナルティエリアの後ろからゴール前に走り込んでいたが、そのまま中村の前でしゃがみ込んだ。軽く肩をさすりながら一言二言声をかけると、真剣な表情で主審あるいはメディカルスタッフの方を向き、ジェスチャーで呼びよせた。
西村雄一主審もすぐに駆けつけ、笛を吹いて担架を呼んだ。スタッフが来ると、高萩は立ち上がって一歩引き救護を見守った。中村は起き上がることができず負傷交代となり、病院に搬送された。