ウェブメディア「BuzzFeed Japan」が、アイドルのWikipediaページを本人と共に作成する企画を実施したことに、「基本ルールがわかってない」と呆れるような反応がネット上に相次いでいる。
この企画でバズフィード記者が作ったWikipediaページが、記事の中立性に関する項目など複数の編集ガイドラインに反していたためだ。実際、問題視されたページは、作成からわずか数時間で削除された。
なぜ、こうした事態を招いてしまったのか。J-CASTニュースが2018年7月18日、バズフィードの広報担当者に取材すると...。
「Wikipediaは宣伝の場ではありません」
騒動の発端となったのは、バズフィードが2018年7月12日夕に公開した「『BiSH』と一緒に、メンバーそれぞれのウィキペディアを作ってみた ソースは本人!」(現在は見出しが修正されている)と題した記事だ。
アイドルグループ「BiSH」メンバー3人へのインタビュー記事で、バズフィード側から「メンバーのウィキペディアを作る無茶な企画を提案」したと説明。肩書や趣味などを取材し、その回答を基に彼女らのWikipediaページを新たに作成する――という流れだった。
実際、この「ウィキペディア作ってみた」記事が公開される数十分前には、BiSHメンバー3人のWikipediaページが新たに作られていた。もちろん、作成者はバズフィード記者の運営するアカウントだ。
だが、記事の公開から約2時間30分後。今回の企画で生まれたメンバー3人のWikipedia項目が、別のユーザーの手によって削除された。新規ページの作成要件を満たしていないうえ、「自己宣伝」の疑いもあると判断されたためだ。
作成した記事が削除されたことに気付いたバズフィード記者は、ページを元のように「復元」。だが、別のユーザーは上記の理由で再び削除。一時、削除と復元が繰り返される「編集合戦」の様相を見せていた。
こうした状況を見かねたのか、Wikipediaの編集ルールに詳しいとみられるユーザーが、バズフィード記者に対して、
「BiSHのメンバーの個別記事を作成されておりましたが、Wikipediaは宣伝の場ではありません」
と注意のメッセージを送る事態にまで発展した。結果として、こうしたやり取りの後にBiSHメンバー3人のページが「復元」されることはなかった。
「ソースは本人だから安心安全」としていたが...
なぜ、今回のバズフィードの企画はNGだと判断されたのか。
まず、アイドルグループなどのメンバーについて、Wikipediaでは原則として「ソロとして特筆すべき活動のない人物」の場合は個別のページ作成を認めていない。そのため、他の編集者から、基準を満たさないただの「自己宣伝」と判断されたようだ。
また、バズフィード側は記事を紹介する12日夜のツイッター投稿で、
「ソースは本人だから安心安全」
と書いていた。
だが、本人から直接聞いた情報を記載することは、中立性を担保することや第三者による検証が難しいことから、Wikipediaが掲げる掲載基準に反している。つまり、「安心」でも「安全」でもないワケだ。また、Wikipediaの編集案内ページには、
「自分自身の記事をつくらない」
という注意事項をまとめた項目も。今回の手法は、こうしたガイドラインにも反する可能性がある。
そのため、こうしたWikipediaの基本的なルールに反したバズフィードの企画をめぐって、ツイッターやネット掲示板には、
「BuzzFeedはWikipediaを何だと思ってるんだろうか?」
「ネットメディアなんだからウィキペのルールぐらい把握して書けよ」
「さすがに『バカジャネーノ』しか言葉が出てこない」
などと呆れたような反応が相次いで寄せられた。
BuzzFeed「(記者は)ガイドラインを把握していた」
今回の騒動について、BuzzFeedJapanの広報担当者は18日夕、J-CASTニュースの取材に対し、
「担当者はガイドラインは把握しておりましたが、著名人に取材をし、それを元にWikipediaの記事を作ることが『自分自身の記事をつくらない』などのガイドライン違反にあたると判断される可能性を考慮しておりませんでした」
と釈明。今回の企画にガイドライン違反との指摘が寄せられたことを「重く受け止め」るとして、記事の修正と追記を行ったと回答した。
実際、18日20時時点で記事の見出しは、当初の「『BiSH』と一緒に、メンバーそれぞれのウィキペディアを作ってみた ソースは本人!」から、
「『BiSH』と一緒に、メンバーそれぞれのウィキペディアに載るような情報を聞いて見た」
と変わっていた。
つまり、本来の企画の「Wikipediaページを作る」という部分に関する記述がすべて変更されていたのだ。当初は、バズフィードが作成したWikipediaページのスクリーンショット画像も掲載されていたが、これも削除されていた。
こうした修正を行った上で、記事の末尾には、
「記事に対し、ウィキペデディア(原文ママ)の『自分自身の記事』『特筆性の乏しい人物の宣伝行為』を禁止する規約に違反しているとのご指摘をいただきました。ウィキペディア上の記事は現在、削除されております。ご指摘を受け止め、見出しやウィキペディアへのリンクなど、記事を一部修正させていただきました」
との説明が追記されていた。